2024年市場予測の誤算、AIブームで米国主導の株高継続
Naomi Rovnick Dhara Ranasinghe Rodrigo Campos [ロンドン 23日 ロイター] - 2024年の初めに多くの投資家は、世界的な株高が失速し、米国の金利が急速に引き下げられて国債価格が上昇し、ドルが軟化、新興市場の通貨が強くなると予想していたが、そのコンセンサスは完全に覆された。 地政学的リスクや一部先進国の経済的課題にも関わらず、MSCI全世界株式指数は2年連続の上昇となる見通し。 これは主に人工知能(AI)ブームと堅調な経済成長による米国への資金集中が要因。ドルは7%上昇し、米株価も大幅高となり、トランプ大統領の再選も追い風となった。 暗号通貨ビットコインも年初から128%上昇した。しかし、米国への依存度が高まる中、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ幅の縮小示唆や軟調な雇用統計、日本の利上げなどで市場は揺さぶられ、8月には短期間の暴落も経験した。 さらに、トランプ大統領の関税によるインフレ懸念や巨額の政府債務による国債市場への影響も不安材料となっている。米国経済の動向が世界市場を大きく左右する状況となっている。 昨年大幅に上昇したS&P500株価指数は、年初から24%上昇している。エヌビディアは172%上昇し、電気自動車(EV)メーカー、テスラは69%上昇した。 シュローダーズによると、いわゆるマグニフィセント・セブンと呼ばれる米国のハイテク株は、MSCIの世界株指数の約5分の1を占めており、これらの企業の業績やAI技術が期待外れだった場合に市場に与える影響は大きい。 ユーロは対ドルで約5.5%下落し、欧州株は米国株との比較で過去25年間で最もパフォーマンスが悪化した。 欧州中央銀行(ECB)は4回利下げを実施、25年には欧州経済が上向くとの見方もある。投資家が分散投資先を見つけるのに苦慮する中、金は今年27%上昇した。 中国株は当局が刺激策を打ち出す姿勢を示したことから9月の1週間で16%近く上昇した。その後は何度も週間ベースで下落した。24年に中国にしがみついた投資家は、年間14.5%の上昇で報われたが、多くの投資家は、当局が直接行動を起こすまで短期的な好不況のサイクルが続き、欧州やアジアの市場を混乱させると予想している。 米10年債利回りは今年約60ベーシスポイント(bp)上昇、英10年債利回りは100bp上昇、独連邦債10年物利回りは16bp上昇した。日本の10年債利回りは45bp上昇し、03年以来の大幅上昇となった。 トランプ次期米大統領の政策がFRBの政策にどのような影響を与えるかが不透明となる中、債券市場にとって来年は厳しい年になる可能性がある。先月のフランス国債市場の混乱は、いわゆる債券自警団が過剰な借り入れを行った政府を罰する用意があることを示した。