ホンダ3代目「フリード」、計画比約6倍の好発進 トヨタ「シエンタ」との違いは?
「モビリオ」の後継車種として、2008年に登場したホンダ「フリード」。軽自動車を除く登録自動車において、ホンダとしては国内で最も販売台数が多い主力車種が、このほど3代目へとフルモデルチェンジした。販売も好調で、抜きつ抜かれつのライバル関係にあるトヨタ「シエンタ」との競合関係が今後どうなるのか大いに気になるところだ。その走り、機能の進化をたっぷりと検証する。最も注目すべきポイントは、3列目シートの快適性だ。 【関連画像】3列目シートの快適性を高める後席クーラーが、2列目シート前方のルーフ部に付いた 本田技研工業(以下、ホンダ)のエントリーミニバンである「フリード」が、3代目に進化した。2024年6月28日に販売が開始され、発売後約1カ月で約3万8000台を受注。これは月次の販売計画(6500台)の約6倍で、好調なスタートを切った。 新型フリードの価格帯は、ガソリン車が250万8000~308万7700円(税込み)、ハイブリッド車「e:HEV」が285万7800~343万7500円(同)となる。 定番ファミリーカーであるミニバンの世界は、トヨタ自動車(以下、トヨタ)の「ノア」「ヴォクシー」、日産自動車「セレナ」、ホンダ「ステップワゴン」が熾烈なシェア争いを繰り広げているイメージが強い。 フリードもファミリーカーだが、それらの車種よりもボディーサイズが小さく、最小クラスの3列シート車となる。ライバルはトヨタ「シエンタ」のみで、2車種が“ガチンコ”対決する構図だ。 2車種の近年のバトルの様子を年間新車登録台数で見ると、20年は国産車全体で7位のフリードが7万6283台、8位シエンタが7万2689台だった。21年は、10位のフリードが6万9577台、13位のシエンタが5万7802台。22年は、6位のフリードが7万9525台、8位シエンタが6万8922台。 ここまではほぼ互角の戦いだったが、23年は一変。シエンタが3位で13万2332台だったのに対し、フリードは10位で7万7562台と後塵(こうじん)を拝したのである。 23年のシエンタの台数急上昇は、22年8月に現行型へフルモデルチェンジしたことが、大きな成果を上げたためだ。ただフリードも先代が、モデル末期にもかかわらず7万7000台を売り上げており、モデルライフを通じて高いセールスを記録し続けた点は見過ごせないところだ。 ●3列目シートまでエアコンの風がよく届く秘密 ライバルが新型となって大きく成長したことは、フリードの大きな危機と言っても良い。何しろ、近年ホンダ車の登録自動車(軽自動車を除く)で国内販売台数トップであり、ホンダとしても失敗が許されないモデルがフリード。だからこそ、気合十分のこだわりで3代目を投入してきた。 シエンタとフリードに共通する価値は、5ナンバーサイズを最大限活用していること。ミドルサイズのミニバンよりは居住空間は小さいものの、小さなボディーならではの取り回しの良さにある。 もちろん、必要十分な居住スペースは確保しており、自宅の駐車場への出し入れや、道が狭いなど生活環境でも適用しやすい点も評価されている。そのため、運転の苦手 な“パパママ層”から使いやすいと支持されている。 基本性能における共通点は、ファミリー層に求められる両側スライドドアを備えたミニバンであること、経済的な1.5Lエンジンを搭載していること、そしてガソリン車とハイブリッド車を用意していることだ。ボディーの大きさは全長4.3m前後で、また3列シートで最大7人乗りもできる点も同じだ。 こうした共通点を踏まえて、シエンタにはない新型フリードならではのポイントを挙げるとすれば、一つはデザインの異なる「エアー」と「クロスター」という個性を明確に打ち出したモデルを2つラインアップしたことだろう。 また、3列シート車にリヤクーラーをクラス初で採用した点も注目だ。おかげで3列目シートまで冷風がよく届き、室内の快適性を高めている。 エアーは、標準車と言える基本となるモデルだ。ステップワゴンをほうふつとさせるミニバンらしいスタイルで、質感を高めている。新型では3列シート車のみで、2列目がキャプテンシートとなる6人乗りと、2列目が3人掛けのベンチシートとなる7人乗りを選べる。 もう一方のクロスターは、先代より登場したアウトドアニーズを意識したクロスオーバーモデルだ。3代目でデザイン上の差異化を明確にし、専用フロントバンパーやボディー外周のプロテクションモールを追加。多目的スポーツ車(SUV)っぽさを強めている。 3列シート車の6人乗り仕様と、専用仕様としてラゲッジスペースを広くした2列シート5人乗りも用意している。エンジンや足回りなどのメカニズムはどちらも同じだが、使い勝手に合わせて選べるようになっている。 ファミリーカーとしては小型のフリードだが、そのボディーサイズを最大限活用した車内空間は、頭上空間にもゆとりがある。思ったよりも広い印象だ。 小型の3列目シート車には、エアコン等の吹き出し口がフロント部しかなく、3列目まで冷やすには時間がかかる。そこで先代までのフリードでは、1列目と2列目シートの間に、サーキュレーターを頭上に装備していた。それでも3列目シートの快適性は改善されていたが、リアクーラーを備えた新型フリードでは、より冷たい風が3列目まで届くようになった。