ホンダ3代目「フリード」、計画比約6倍の好発進 トヨタ「シエンタ」との違いは?
乗車してすぐに涼しくなるので、サッカーや野球などの習い事で子供やその友だちを乗せるような子育て世代には、うれしい装備だろう。 室内空間は、全タイプで1列目と2列目の間でウォークスルーが可能。2列目がキャプテンシートとなる6人乗り仕様であれば、運転席から3列目まで車から降りることなく移動もできてしまう。後席に座らせた子供の面倒が見やすく、急な降雨時に後席に置いた傘を取りに行き、スライドドアから降りることもたやすい。ウォークスルー機能は、想像以上に便利だと感じた。 機能面では、3列目シートが軽量化と機能向上がなされ、以前より簡単に折りたたみやすく、荷室を広げられる。クロスター専用の5人乗り仕様については、フロアボードによって床面を2分割にできる。収納を上下で分けられることに加えて、2列目シートを折りたたむとフラットな床面となる。布団や寝袋を使った車中泊を想定した仕様だ。 “走り”も先代より磨きがかかっている。室内の静粛性が高まり、乗り心地が向上。ガソリン車は意外と静かで元気よく走る。ガソリン車の方が、コスパが良く感じた。ただより静かさを求める人やロングドライブを楽しむ人には、ハイブリッド車の力強さと燃費の良さが大きな武器となる。もちろん、ハイブリッド車の方が、走行時は静かだ。 手ごろなサイズ感のため、街中での運転はし易い。室内の質感が従来型よりも向上しているのも好印象だ。 ●課題はプロモーション戦略? 24年上半期の新車登録台数では、登録車全体で3位のシエンタが5万5649台に対して、6月に新型が出たフリードは7位で3万8429台。台数では離されたが、魅力的な3代目を投入したことで、モデル末期で買い控えていた層の取り込みにも期待がかかる。 7月と8月の登録台数では、シエンタが上位となるが、その差をじわじわとフリードが詰めている。下半期のライバルのシエンタと戦いは、フリードの追い上げが予想され、再び互角に戻る可能性も高そうだ。 ライバル車種同士で切磋琢磨(せっさたくま)しており、どちらもクルマとしての基本性能は高く、3代目が登場したことで購入検討者は今まで以上に車種選びに悩むことになりそうだ。 ライバルとなるシエンタの強みは、近年日本でも人気が高いフランス車の多目的車(MPV)のような愛嬌(あいきょう)あるポップなスタイルと、「TNGA」開発によるクルマとしての磨き上げにある。さらに犬をキャラクターに使ったテレビCMは女性受けがよいとされ、主婦層に決定権があるファミリーカーとしてのマーケティングとしては一定の成功を収めている。 それに対して3代目フリードは、ちょっとおとなしいエアーと、ゆるキャラ感のあるクロスオーバーモデルのクロスター2本立てでデザインが選べることが強み。またミニバンで人気の2列目キャプテンシートの6人乗りがある点や、新機能のリアクーラーを搭載した点は、シエンタにない強みだ。 弱点を挙げると、シエンタよりも高めとなる価格設定である。ただ近年の物価高を踏まえると、発売時期が遅いほど部材調達で高い値付けをせざるを得ないので致し方ないことなのかもしれない。 強いて言えば、その魅力をテレビCMでしっかりと伝えているかというと、少し弱い気がすることだ。クルマとしての基本機能や性能としての競争力でシエンタを上回る点も多い新型フリードだけに、シエンタに勝ち続けるには、プロモーション戦略の見直しが今後の運命を握っているようにも感じる。
大音 安弘