新トレンド“カウボーイ・コア”の実態 ビヨンセの新アルバムやファレルの「ルイ・ヴィトン」など多様化するウエスタン文化
またコロナ・パンデミック後、アメリカの人口が都市部から南部の州へとシフトしていることへの指摘もある。20年以降、全米成長の大部分はテキサス、フロリダ、ノースカロライナ、ジョージアに集中する一方、カリフォルニアやイリノイ、ニューヨーク、オレゴンなどの州では人口減少が続いている。米国国勢調査局によると、南部地域の拡大は23年の全米成長の87%を占め、140万人以上の住民が増加した。「この国の多くの人々にとって、ウエスタンはファッショントレンドではなく、ライフスタイル。彼らは毎日、田舎での生活に合わせた服を着て生活している」と、テキサス州に本社を置くブーツ会社ツイステッドX グローバルブランド(Twisted X Global Brands)の社長兼CEOであるプラサド・レディ(Prasad Reddy)は説明する。
もちろん、テレビも1つの要因だ。「トニー・ラマ(TONY LAMA)」や「チペワ(CHIPEWWA)」の親会社であるジャスティン・ブランズの南東地域セールス・マネージャー、マイク・ウィニンガム(Mike Winningham)は「近年、アメリカで放送されている現代風西部劇のテレビドラマ『イエローストーン(YELLOWSTONE)』の影響力は大きいのではないか」と語る。「イエローストーン」が18年にCBSで放送開始して以来、家長を演じるケビン・コスナー(Kevin Costner)の牧場一家を描いたドラマは視聴率ヒットを記録している。「Deadline」は、同番組のシーズン5の初回が推定680万人の視聴者を記録したと報じ、2本スピンオフ作品も成功を収めた。80年代の「アーバン・カウボーイ(URBAN COWBOY)」など、いつの時代にも人々をウエスタンに駆り立てるテレビ番組や映画はあるのだ。
拡大するウエスタンスタイル
24年にウエスタンファッションがトレンドであり得るのは、それが地方市場や南部の州だけに集中しているわけではないからだ。実際、「ブート・バーン」のニコルは、「ニューヨークやロサンゼルスなどの流行に敏感な都心部では、ウエスタンのトレンドが人気を博しており、カウボーイブーツの需要が強い」と述べている。そして、以前は好き嫌いが極端だったウエスタンスタイルが、今ではデザイナーやスタイリスト、テイストメーカーらにますます受け入れられている。業界関係者は理由のひとつに、カウボーイの多様な歴史に対する評価が高まっていること、カントリーミュージックやロデオ、乗馬のコミュニティが多様化し拡大していることを要因として挙げている。