世界が日本の小学校教育に驚嘆した理由とは!?【映画『小学校~それは小さな社会~』山崎エマ監督インタビュー】
『小学校~それは小さな社会~』ってこんな映画
自宅で給食の配膳や返事の練習をする、もうすぐ1年生になる子どもたちの姿がある。いよいよ入学式。1年生を優しく導くのは、6年生の仕事。それ以外にも6年生は、校内で色んな役割を担っている。コロナ禍、マスク姿で登校する子どもたちは、机にパーティションを立てて給食を食べ、先生たちは学校生活をどうにか守ろうと話し合いを重ねる。そんな中、緊急事態宣言が発令され、オリンピックは開催されるのに林間学校は中止に。やがて全校登校が再開され、運動会、音楽会の準備が始まる。1年生も6年生もそれぞれのステージで、自分が出来ないことに対峙し、先生の厳しい言葉に涙をこぼし、歯を食いしばって練習を続ける。春、夏、秋、冬と季節が変わっていく中で、変化・成長していく子どもたち、自身も悩み葛藤しながらより良い指導を模索する先生たちの姿が映し出されていく――。 ──小学校時代は「英語が喋れることが弱みだった」と仰るほどのトラウマがあったそうですが、どの時点で日本の小学校に対する評価が変わったのですか? トラウマと言っても1~2年生の記憶で、5~6年生になる頃には生徒会長、応援団長、音楽会の指揮者など、率先してみんなと楽しく過ごしていました。でも日本の小学校の良さについては、海外で生活するようになって初めて気づいた感じです。色んな人と話をする中で、自分がいかに特殊な経験をしたのかが分かって来て。アメリカでは、全くやり方が違いますから。 もちろん作り手によっては、トラウマを与えられた経験を何より優先して取り上げたい人もいるでしょうし、味わった色んな苦労を軸に制作する道もあったと思います。でも私は何かをジャーナリズム的に暴くのではなく、人間を観察していく中で魅力的なものを撮りたい思いがベースにあります。但し、その中にも矛盾があれば、物事の白黒だって表裏一体だったりする。そういうものをも見逃さずに撮りたかったんです。 ──本作に登場するのは、とっても魅力的な子どもたちです。うまく出来なくて泣きべそをかいたり、目の前の状況に対処できなかったりする一年生たち。どのように被写体を選んだのでしょう? 初めからピンと来てカメラを向けたのですか? いえいえ、本作は「学校」が主人公なので、出来るだけ大勢の子どもや先生方をまずは撮っていくことから出発しました。とはいえ全員を撮れるはずはないので、知り合うことから始めて。撮影に入る世田谷区立塚戸小学校の地域の保育園に行き、次の年に入学する子どもたちのご家庭と知り合って、お邪魔して入学前の色んな映像を撮りました。ぼんやりと誰を中心に撮ることになるかを考えつつ、誰がどのクラスに入り、どの先生が担任になるのか分からないので、出来るだけ多くの人を撮れる体制を作っておきました。 学校での撮影が始まってクラスの様子を撮るときも、どの子を撮ると絞らずに、色んな出来事や面白いエピソードを満遍なく撮っていきました。かなり大勢の人たちを追っていく中で、面白いエピソードに絡んでいる子や活躍している子の親御さんと新たに連絡を取り、話し合い、どういうご家族か見極めながら進めていきました。かなり大勢を撮りながら、段々と追う人数が絞られていく感じでした。 撮影/橋本紗良 【続きはLEEwebで】 ──── 折田千鶴子 Chizuko Orita 映画ライター/映画評論家 LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。 映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス から