世良公則「土を練っていると、雑念が消えて〈無〉になれる。陶芸の魅力にとりつかれ、15年。この世界ではまだ若造。立ち止まってなどいられない」
◆若手陶芸家との交流が刺激に 陶芸のおかげで新たな交友関係も生まれました。ある日、ミュージシャン仲間のつるの剛士君が陶芸をやりたいと、事務所に来たんです。僕と横に並んで作っていたのですが、彼はカンがいいからすぐにコツをつかんで、ぐい呑みを作っていました。以来、つるの君は世良の「一番弟子」を名乗っています。(笑) NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で共演したスウェーデン出身の庭師・村雨辰剛君も日本文化に精通していて、話が合うんですよ。 つるの君と3人で不定期に行っているのが、「男のお茶会」。僕の事務所に集い、抹茶と和菓子で何時間も陶芸や日本文化の話題で盛り上がります。つい先日も「そろそろお茶会開いてください」と、つるの君から連絡が来ましたよ。 ほかにも、幸兵衛先生のご子息・加藤亮太郎さんをはじめ、全国の若手陶芸家たちと交流するようになりました。彼らは僕より20歳ぐらい年下なのですが、陶芸家としては大先輩。 最初は、彼らが口にする陶芸への想いや感情を示す言葉の意味がよくわからなかった。でも、彼らの作品を見て会話をするうちにだんだん理解できるようになり、それを僕自身の作品にも還元する――ということをずっと続けてきました。
彼らの作品はそれぞれ、美濃、信楽、備前、九谷……と産地が異なり、個性豊か。集まれば面白いことができるんじゃないかと、僕がプロデュースして、2009年に陶芸家集団「AKATSUKI―暁坏」を結成しました。 この9月には15周年を記念して、名古屋で彼らとグループ展を行います。僕もいまはこの展覧会に向けて、集中して作陶しているところです。 音楽も陶芸も、ものをつくり、表現するという意味では同じ。僕はよく若い人とセッションするけれど、それぞれの感性でキャッチボールをするのは新鮮だし、刺激的なんです。 陶芸家としてプロデビューしたのは2022年。初めて土をこねてから12年後です。歌手デビューはアマチュアから数えて8年目でしたから、それより時間がかかりましたね。 陶芸の世界では、50、60代は若造と言われる。僕もまだ若造ですから、70、80代が楽しみです。ただ、続けていくには体力が必要だし、感性を磨いていかなくては。音楽の道と同じ、立ち止まってなどいられません。 (構成=村瀬素子、撮影=ANDU)
世良公則