学校の健康診断、脱衣必要? 「不快な経験」訴える子も、疾病見逃しには懸念
学校での健康診断を巡り、近年、脱衣の必要性など在り方の議論が各地で起きている。文部科学省は健診に関して、1月に通知を出した。正確な検査に支障のない範囲で「原則、体操服や下着の着衣、タオルなどで身体を覆う」とし、プライバシーと心情への配慮を求める内容だった。 【写真】過剰な叱責・しつけ「エデュハラ」に法規制を 加害者に自覚なく子どもは抵抗できず
学校で毎年行われる健診は、疾病をスクリーニングするのが主な目的だ。そのため、着衣での健診には疾病の見逃しを懸念する声もある。日本医師会と文部科学省は、学校医らが健診を行う上での留意点をまとめ、9月に公表した。 学校健診はどうあるべきか。子どもや保護者の思い、医療者らの考えを聞いた。(共同通信=小川美沙) ▽健診が「不快な経験に」 今年5月以降、健診に関するニュースが相次いだ。5月末、横浜市で小学校16校で、保護者や児童に十分な説明がないまま、上半身裸で行ったことが明らかになった。さらに群馬県みなかみ町立小で、小児科医が本人や保護者の合意を得ずに、児童の下半身を視診したことが判明。北九州市立小でも、複数の児童が学校医から下腹部を触られたなどと訴えたケースが表面化している。 一連の問題を受け、最近健診を受けた家庭に取材した。 横浜市の田中洋子さん=仮名=には小学低学年と高学年の娘2人がいる。2人は6月に行われた健診のあとに繰り返し訴えた。「恥ずかしかった」。普段のかかりつけ医の診察では脱衣することはない。しかし、学校健診では低学年の娘は上半身裸。高学年の娘は体操服を着て首元までめくり上げたと話した。田中さんは驚きを隠せなかった。
内科検診に関しては5月上旬、学校が保護者向けにアプリを通じて「ほけんだより」の配信があった。それには主に次のように記されていた。 ・原則体操着を着用、自分で上げ下げ ・下着の上からでは心臓の音が聞きづらいので、検査時は着用しない ・脊柱のねじれやわん曲、胸郭の陥没や突出など疾病の有無を確認する際、正確な診断のため脱衣の上、視診・触診をする場合がある 服を脱ぐかどうかはプライバシーに関わる重要な問題だ。田中さんは、「ほけんだよりを配るだけでは配慮とは言えない」と話す。娘たちは幼い頃から、プライベートゾーン(水着で隠れる部分)は大切で、他人に見せる必要はないと学んでいる。「なぜ脱ぐ必要があるのか事前に十分な説明がないままで、娘にとって不快な経験となってしまった」 ▽子どもの前で発達の話 横浜市の工藤明子さん=仮名=の小6の娘は、「脱衣は嫌だ」と訴えた。親子で話し合い、検査項目も踏まえ、スポーツブラを着用して受診できるよう学校側に申し入れた。「健診で嫌な思いをしている子は多いと思う。ただ、学校が全て個別対応するのは難しいだろう。校医によってやり方が違うのも問題。標準化されるべきだと思うが…」と複雑な思いを口にする。