OpenAIがリアルタイム・データベーススタートアップを買収、その狙いとは?
AIは実用性を意識した方向にも進化
実世界での実用性というよりは、処理速度やトークン数といったベンチマークを追い求め、強調しすぎていると非難されがちな昨今のIT業界。 しかし、このような追加情報ソースとのリンク能力の向上のように、ユーザーエクスペリエンスへより焦点をあてた方向にも、AIは確実に進化しているようだ。 OpenAIのライバル企業と言われるAnthropicが提供するAI「Claude」に備えられている機能「Artifacts」は、このユーザーエクスペリエンスの観点から注目されている。 ArtifactsはClaudeのチャットインターフェースの横に設けられた専用のワークスペースで、ユーザーはAIが生成したコンテンツをリアルタイムで直感的に操作および改良できる。その使い勝手の良さは、激化する生成AI企業の競争に、「インターフェース」を新たな戦場として持ち込むのではないかとも言われている。
OpenAIは買収の連続で生成AI戦線に挑む
このRocksetの買収は、OpenAIにとって2番目の大型買収となり、同社がAI領域における競争が激化する中での戦略的な動きを活発化させていることを表している。 昨年、OpenAIは、Instagramのコアエンジニアが在籍する、MMORPG制作米国スタートアップ「Global Illumination, Inc.」を買収。さらに今年は、元Dropboxのプロダクトマネージャーと元Googleのソフトウェアエンジニアによって設立されたMulti(旧Remotion)を買収している。 Multiはニューヨークに拠点を置く5人のスタートアップ企業で、Macを使用する従業員向けの画面共有およびコラボレーション技術を提供する企業だ。
法人向けAIを強化するOpenAI
この一連のOpenAIの取り組みは、ChatGPTの法人向け機能の強化を目的としたものだと考えられる。 昨年8月、OpenAIは「ChatGPTエンタープライズ」を発表した。このエンタープライズグレード版は、セキュリティとプライバシーが強化され、企業向けに設計されている。 データは完全に企業が制御可能で、すべてのやり取りが暗号化されており、新しい管理コンソールではドメイン認証、シングルサインオン(SSO)、使用状況報告などの機能も提供され、最新のGPT-4を搭載、高度なデータ分析ツールやカスタムAIプログラムを作成するための無料クレジットも提供されている、ビジネス利用に特化したものだ。 昨年の発表の段階でも、すでにFortune Global 500企業の80%以上がChatGPTを統合しているという実績があったが、「ChatGPTエンタープライズ」の発表後、その利用数も順調に増加、今年1月の約15万から3カ月後には約60万に増加したと報道されるなど、ビジネスシーンにおいて、もはや欠かせない存在となっているChatGPT。買収の連続によるさらなる機能強化に大きな期待が寄せられている。
文:大津陽子/編集:岡徳之(Livit)