ワクチン不信の米国民が過去20年で激増 偽情報の拡散や政治化が原因か
ワクチンに関する誤情報の拡散も世論に影響
偽情報や誤情報の拡散によっても、ワクチンの政治化は進む。例えば、ソーシャルメディア(SNS)上では、麻疹やおたふく風邪、風疹のワクチンが自閉症を引き起こすという誤った情報が拡散された。自閉症とワクチン接種の関連性を裏付ける科学的根拠はないにもかかわらず、この主張は一部の米国人の間で支持され、ワクチンに対する信頼を低下させた。 こうした誤った情報の拡散に加え、政治指導者の言動には一貫性がないことから、ワクチン推進の背後にある動機に多くの疑問が投げかけられることとなった。特に新型コロナウイルスではワクチンの開発が急速に進められたため、科学的な理由ではなく政治的な動機によってワクチンが奨励されているのではないかと疑念を抱く人もいた。 ワクチン接種をためらう人が増えていることは、科学と公衆衛生の観点からは重大な問題となる。ワクチンのような科学的手段が政治的な論争に巻き込まれると、国民の信頼が損なわれ、感染症の拡大を防ぐための努力が妨げられることになる。 麻疹はまさにこれに当てはまる。米国ではすでに根絶宣言が出されており、子どもたちが予防接種を受けていれば国内で感染者が出ることはなかったはずだ。ところが、2024年には首都ワシントンのほか全米30州で麻疹の感染が報告された。 こうした課題を克服するには、政治家のほか、保健当局と医療従事者、教師と保護者が一丸となって取り組む必要がある。明確で透明性のあるメッセージや教育内容の見直し、研究開発の推進、インターネットやメディア上の情報を的確に選択する能力の育成などにより、ワクチン接種に対する信頼は回復できるだろう。私たちの健康と子どもたちの未来は、こうした努力にかかっている。
Omer Awan