過酷な医療現場…働き方改革、医師不足を解決する秘策とは
今回のテーマは、「医療崩壊を防げ!~救える命を守る~」。建設業界や物流業界で進んでいる「働き方改革」。それが、長時間労働が当たり前だった医師たちにも広がっている。 大学病院などに勤務する勤務医が対象で、これまで実質“青天井”とされてきた時間外労働に、年間960時間の上限が設けられたのだ。しかし、医療、特に救急は生死の瀬戸際にある患者も運ばれてくる「命の砦」。救える命は何としても救わなければならない。医師たちはいかにして、この働き方改革に向き合うのか?その最前線に迫る。 【動画】過酷な医療現場…働き方改革、医師不足を解決する秘策とは
「働き方改革」前夜 ある救急クリニックの危惧
今年3月。民間の「川越救急クリニック」(埼玉・川越市)には、次々と救急の患者が運び込まれていた。迅速な判断が求められる救命現場で対応するのは、上原淳院長だ。この日の睡眠時間はわずか3時間半。このクリニックでは救急患者だけでなく、毎日40人ほどの外来をたった2人の医師で対応している。
厳しい現実…。ただでさえ人手不足なのに、追い打ちをかけたのが医師の働き方改革。 これまで通りの医療が提供できるのか。上原院長は、「分からない。今まで経験したことがないことだ。うちは今まで通り対応していくが、できなくなったクリニックは患者を断るだろう。その分うちにしわ寄せがくるかもしれない」と話す。慢性的な医師不足を長時間労働で補う…すでに現場は限界を迎えていた。
密着!命の砦 福島県医科大学附属病院 高度救命救急センター
福島県立医科大学附属病院には、県内唯一の「高度救命救急センター」がある。集中治療が必要な患者を受け入れるICUなどが21床あり、17人の救急科医師が在籍しているが、この大学病院が以前から向き合ってきたのが、働き方改革だ。5年前から医師の労働時間の削減にいち早く取り組んできた。
「本当に患者さんを助けたい。重い症状の人が元気になって帰って行くことに喜びを感じている」。救命医一筋24年、救急科副部長の小野寺誠さんは、午前8時に出勤し、午後6時前には退勤している。小野寺さんの残業時間は約半分に減ったというが、一体どんな改革をしたのか。 実は福島医大の救命救急センターは、主治医ではなく、チームで患者を診ているのだという。チーム内で患者の情報共有することで日勤の医師は夜勤の医師に患者の情報を引き継ぎ、決められた時間で帰ることができるというわけだ。小野寺さんは、「主治医制の場合、主治医がいないと誰も患者のことが分からない…そうならないように、全員カンファレンスで患者情報を把握している」と話す。1人の医師が1人の患者を診るのではなく、可能な限り分業を進め、医師の仕事をチームでカバーするという。