過酷な医療現場…働き方改革、医師不足を解決する秘策とは
一方、2015年から、特別な研修を受けた看護師は、医師の指示の下38の医療行為が可能になったため、福島医大では、この研修を看護師に積極的に勧めている。また管理栄養師も栄養の指示にとどまらず、聴診器を耳にあてて食前食後の患者の様子を診ていた。以前は食欲や胃腸の動きをチェックするのは医師の仕事だったが、5年ほど前から担当者を設けて分業。こうして、医師の負担を徐々に減らしてきたのだ。
これらの働き方改革によって、若手医師にも大きなメリットが生まれている。救急科3年目の医師の関根萌さんは、先輩医師に研究の相談をするなど、学びの時間がとれるようになっている。
コロナ禍で一躍有名に…ファストドクターが挑む“医師不足問題”
しかし、どんなに働き方を変えても、医師だけで解決できない問題がある。それは、救急搬送の数だ。近年、救急車の出動件数は増加の一途をたどり、全国では、この15年で約1.5倍に(出典:総務省消防庁)。中には、入院の必要がない軽症患者も少なくないという。「重症でない人がベッドを埋めると、いざ『受け入れて』と言われた時に断らないといけない」と小野寺さん。救急搬送の数を減らすため、ある秘策をとった。 3月下旬。福島医大の会議室にやってきたのは、2016年に創業した医療ベンチャー「ファストドクター」の社員。コロナ禍で医療がひっ迫する中、自宅療養の患者などを往診し、その存在が知られるようになった。小野寺さんは、救急車の適正利用を図るため、ファストドクターに介入してもらおうと考えたのだ。 福島市の救急搬送者は、半数以上が高齢者。中でも高齢者施設からの要請が多いという。「高齢者施設は往診できない。夜と休日は救急車を呼ぶしかない」と小野寺さん。この課題に対し、ファストドクター地域医療企画室 室長の小出雄大さんが提案したのは、オンライン診療の活用だ。
オンライン診療とは、アプリやウェブで、発熱や頭痛といった症状を選択すると、24時間全国どこからでも医師の診療が受けられるというもの(離島は除く)。薬も、宅配もしくは近くの薬局で受け取ることができる。オンライン診療によって、ファストドクターの提携医療機関の医師が、本当に救急車が必要かどうかを判断することができ、高齢者施設からの搬送を減らせるという。福島市も、この取り組みを全面的にバックアップしていた。