「プロで活躍するのはこういう選手かも…」ハナマウイ投手コーチ・中山慎太郎が語る、ソフトバンク育成6位・川口冬弥の強み
~あの時に話しかけてきた男がプロに行った
2人の出会いは衝撃的だった。中山が自身のパフォーマンスアップの通っていた初動負荷トレーニングジムに川口も足を運んでいた。鏡に向かってシャドーピッチングをしていると「あの、野球をやられているのですか?」と声をかけられた。 「川口が城西国際大4年の春くらいです。『野球を続けたいんですが進路が決まっていないんです』と話してくれた。こちらがハナマウイ関係者ということを伝えると、『興味ある』ということだったので連絡先を交換しました」 「どんな投手か気になったのでスマホの動画サイトで調べました。投球フォームがバラバラなのに球速145キロをコンスタントに出していました。すぐに本西厚博監督(当時)に連絡して、練習参加して入団という流れになりました」 「奇跡的だったと思います」(中山)と語る信じられない展開。身体は大きかったがプレーなど1度も見たことのない、未知の男と共に歩む日々が始まった瞬間だった。 「ドラフト指名後、当時からトレーニングジムの受付をやっている知人からすぐに連絡が来ました。『信じられないです、あの瞬間に私もいたんですよ』と興奮気味でした。映画やドラマの出来すぎたシーンのようですから(笑) 川口はハナマウイ入団が決まり、社員選手として介護職と野球の二刀流生活が始まった。恵まれた体格と登板数が極端に少ない使い減りしていない肩や肘は魅力的。しかし、当初は見ていられないほどメチャクチャな投げ方であり、2人の地道な作業が始まることとなった。
~ベクトルを定めてリリースポイントを安定させる
「ベクトルを捕手方向へ向けることが全てでした」と中山は振り返る。 全身を使って大きく強く投げることだけを考えていたため、1球ごとに力の向き(=ベクトル)がバラバラ。大学時代にはブルペン捕手上部の屋根を超えたと思えば、ベースの3m手前に叩きつけることも多々あったという。 「出会った当初は全身を使って腕を大きく振って殴るような感じの投球フォーム。アーム式を絵に描いたような感じで、腕をブーンと大きく振るような投げ方。球はすごいけど1球ごとがバラバラでした」 球速150キロ近くをコンスタントに出せてもリリースポイントが定まらない。良い球と悪い球の差が激し過ぎるため、「投球におけるボールの再現性」を高めることが必要だと感じ、ベクトルの向きを定めることに取り組んだ 「ベクトルの向きを定めるため、力を伝える方向を1つにまとめることの重要性を説明しました。メカニクスが大事で、具体的には体幹、お腹周り(=腹斜筋)、体重移動です。当時は体幹が弱く、腹斜筋の使い方も定まっていませんでした」 「(川口は)腹斜筋とお尻が強くて使い方も良かったので球速が出たと思います。しかしそこに頼り過ぎたためか、大きく動かし過ぎていた。回旋運動が強過ぎたのでバランスが取れるようにしました」