〈HSP(繊細さん)と更年期問題〉感受性が強い人が「心の疲れ」と上手に付き合うコツとは?
いろんな人の気持ちがよく理解できるけれど、そのせいでとても疲れてしまう。大きな音や強い光が苦手。こうした感受性がとても豊かな人は、「HSP」(感じる力が強い人)と呼ばれます。人の気持ちがわかり、細かいことに気がつくというメリットがある一方、感受性の豊かさゆえに疲れてしまうことも。今回は、HSPの特性と、しんどいと感じる場合のケアについて紹介します。 〈写真〉HSP(繊細さん)と更年期問題|感受性が強い人が「心の疲れ」と上手に付き合うコツとは? ■感受性がとても豊かな「HSP」とは? 先日、このようなご相談をいただきました。 「人からの何気ない一言や行動から、いろいろ考えすぎてしまいます。例えば、足音や息づかい、声色などから、不機嫌なのかな、調子悪いのかななどと想像して、夕方にはぐったり疲れてしまいます。このような敏感な人をHSPと言うというと聞いたのですが、HSPに対策はあるのでしょうか?」(42歳・女性) いろいろなことを敏感に感じることができると、たくさんメリットもありますが、自分は疲れてしまうということもありますよね。そこで今回は、更年期からのHSPに焦点を当ててお伝えします。HSPとは「Highly Sensitive Person」の略で、日本語に訳すと「感じる力が強い人」とか「とても繊細な人」となります。アメリカの心理学者、エイレン・アーロン博士が提唱したもので、約5人に1人の割合で存在するとされています。感じる力が強いというのは、人の感情についてだけではなく、光や音など、いろいろなことに対して他の人よりも敏感であるというような特性、気質です。HSPは病気ではなく、診断名として「HSP」と言われるというものではありません。 ■更年期は刺激に敏感になりやすい時期 人間は、年齢を重ねると刺激にとても敏感になりやすいと言われています。さらに、自分の置かれている状況によっても敏感さは変化します。例えば、更年期はホルモンバランスが大きく変化します。その影響などもあり、様々なことに対して感覚がいつもと違うと感じたり、これまでだったらどうということもない言葉であっても言われてとても傷ついてしまったり…ということが起こることがあります。環境の変化に強いと思っていたのに、環境が変わると心身に大きく影響するようになったという場合もあります。HSPは病気ではありませんが、感じ方が強ければ、時には疲れてしまうこともあります。今回は、HSPとの向き合い方のヒントをお伝えします。 ■細やかな気配りができ、人の気持ちを理解するのが得意 まずは、HSPのメリット、デメリットを知るところから始めましょう。HSPの特性として、自分の感覚器にまるでフィルタがないかのように、周りの情報をダイレクトに吸収しやすいというものがあります。この敏感さは、細やかな気配りをするための力になります。また、周りの人たちの気持ちを察知して理解することがとても得意なので、人間関係を人よりも深く感じられるともいえます。細かいことに気付くことができる力は、とても素晴らしい力です。芸術や研究などといった分野では、特別な才能を発揮することもあります。 ■敏感さがストレスにつながることも 一方で、HSPのデメリットとして挙げられるのが、敏感ゆえにストレスをためやすいところでしょう。人混みや、騒音、強い香りなど、他の人にとっては気にならないことでも居心地悪さや、不快さを感じて、とても疲れてしまうことがあります。また、他の人の気持ちを敏感に察知する力を発揮しすぎて、時にはすごく考えすぎてしまい、自分の心を自分で疲れさせてしまうこともあります。このメリットもデメリットもある豊かな感受性、上手に付き合っていけるとよいですよね。自分自身の感受性と上手に付き合う方法について見ていきましょう。 ■自分自身を理解する 1つ目は「自分自身を理解する」ことです。どんなことに対して感じやすいのかな、敏感なのかなということを、自分自身で把握すると対策が取りやすくなります。例えば、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)で考えてみましょう。例えば、視覚が敏感で強い光が苦手な場合は、サングラスをかけるようにしたり、目を閉じて視覚を休ませるような時間を少し意識して作るだけでも、ストレスを軽減できることがあります。聴覚が敏感な場合は、騒音のある場所をできるだけ避けたり、音を和らげるために耳栓やヘッドホンを使う方法もあります。 触覚が敏感な場合は、自分自身がリラックスできる服を着る、気持ちいいと感じる肌着やタオルを選んでみるだけで、快適に過ごせることがあります。嗅覚への対策は、マスクを使って香りから鼻を守ったり、自分がリラックスする香りをまとってみたりする方法が考えられます。味覚の場合は、できるだけ自分で調理するようにしたり、自然の食材をシンプルな調理法でいただくことで、ストレスを軽減できる場合もあります。ここにあげたのは、あくまでも一例です。自分が敏感なポイントを見つけて、自分にあったリラックスできる方法をこまめに取り入れてみてください。 ■自分自身の優先順位を上げてみる 2つ目は、「自分自身の優先順位を上げてみる」ことです。周りの人に対してすごく敏感な故に、何か気づいたら自分のことは後回しになっていたなんてことありませんか。それではどうしても、疲れやすくなってしまいますよね。「疲れる前に休むんだ!」くらいの気持ちをもって、自分の優先順位を上げるために休みを設定してみたり、自分のためのスケジュールを先に確保したり、意識して自分をねぎらってあげましょう。 HSPは欠点ではありません。メリットがたくさんある特性、自分の個性です。自分が疲れてしまわないよう上手に付き合って、自分自身の持ってる高い感受性を最大限に活かせるといいですよね。ぜひ自分に合ったセルフケアを取り入れてみてください。 文/永田京子 NPO法人 ちぇぶら代表理事、更年期トータルケアインストラクター 1,000名を超える女性たちの調査や医師の協力を経て “更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。口コミで広まり、企業や医療機関など国内や海外で講演を行い述べ3万人以上が受講。2018年カナダで開催の国際更年期学会で発表。
永田京子