“絶叫”に特化する富士急ハイランド。確固たる地位を築くも“意外と”リピーターが少ない理由
ターゲットを絞り込んで唯一無二のポジションを確立
富士急ハイランドは、絶叫マシンに強みを持つある意味ニッチなテーマパーク。マーケティング支援などを行うネオマーケティングは、テーマパークに関連するイメージ調査を行っています(「テーマパーク」の認識と想起に関する調査)。その中で利用したいと思うテーマパークをリサーチしており、富士急ハイランドは8.4%。 東京ディズニーランドが52.6%、USJが48.3%。東京ディズニーシーは34.6%、東京ディズニーリゾートが13.8%。富士急ハイランドはその次に続きます。 東京ディズニーリゾートとUSJは、ストーリー性や世界観を重視したテーマパーク。絶叫系の富士急ハイランドは、その2つと明確な差別化を図っています。利用したいとの意向が2桁を割り込んで低いのは、立地もさることながら絶叫マシンが苦手な人や小さな子供がいる家族に忌避されているためでしょう。 一方、ハウステンボスやナガシマスパーランド、ひらかたパーク、よみうりランド、ジブリパークなどの競合を抑えて優位に立っているところが、“絶叫特化”というニッチ市場に最適化した強さ。 しかし、これは弱みでもあります。ターゲットを絞り込んでいるため、大幅な市場拡大が見込めないためです。
リピート利用が限られるというテーマパークのジレンマ
三菱総研グループのエム・アール・アイ リサーチアソシエイツは、テーマパークの利用者に関する興味深い調査を行っています(「生活者市場予測システム(mif)調査レポート」)。東京ディズニーランド、USJ、富士急ハイランドで、過去1年間で1回以上利用した人の来園回数を調べたもの。それによると、3つのうちのどのテーマパークでも、年1回の利用者は65%程度、年2回が16%程度、年3回は9%程度と共通していたのです。 東京ディズニーランドのように認知度が高く、ファンが多いテーマパークや、富士急ハイランドのように絶叫マシン好きに支持される遊園地は、一見すると利用頻度が高いようにも感じます。しかし、実はどこもほとんど変わりません。 富士急ハイランドはニッチ市場に最適化して競合のテーマパークとの差別化に成功しました。しかし、母数を拡大することが難しいうえ、リピート回数を引き上げる施策も限られているのです。 外国人観光客による富士山の観光に注目が集まっており、インバウンド需要には期待できるかもしれません。ただ、富士急行は列車などの運輸業には外国人観光客の好影響が出ていると発表していますが、テーマパークには言及していません。ほとんど影響がないのでしょう。 そうなると、中長期的には富士急ハイランドの客数は横ばい、もしくは日本の人口減とともに微減する可能性が高いことになります。