人工肛門ってどういうもの? いまだ進まない「排泄障害」への理解
一般の人たちへの啓発活動は十分ではない
そもそも人工肛門、ぼうこうを持つと、どのような生活になるのか。「日本オストミー協会東京支部」支部長の竹内恒雄さん(72)に聞いた。 「中井さんのように治療の一環で一時的に人工肛門となるケースはまれで、大半が手術後、“一生のおつきあい“になります」 竹内さんは人工肛門を持って25年。セーターとスボン姿の外見からは、装具をつけていることは全くわからない。 手術によって便や尿を出すために腹部に造設された排せつ孔は「ストーマ」と呼ばれる。ストーマ周囲の皮膚に接着させる「面板」に、不定期に出る便や尿を受ける袋をつける仕組みだ。竹内さんは袋にたまったと思ったら、1日に5、6回、トイレに行く。装具は使い捨て。患者それぞれだが、竹内さんは5、6日ごとに取り替えている。 大変なのは、まだ装具の使い方に慣れていない段階で、外出先でトラブルに見舞われることだ。 「通勤中に装具が外れて、トイレに駆け込んだり、慌てて自宅に戻ったりしたことは何度もある」 人工ぼうこうを持っている東京都足立区の女性(74)も、 「尿は漏れると、すぐに洋服がびしょびしょになる。心配で、パンツ型の大人用おむつを身につけた頃もあった」 女性は、なるべく周りの人にも知ってもらおうと、人工ぼうこうについて積極的に話しているという。 23区を管轄する支部では、年に8回、装具の使用や情報を提供する講習会を実施しているが、手術をした患者や家族が主な対象で、一般の人たちへの啓発活動は十分とは言えないという。 (取材協力:日本オストミー協会、協会内の若い世代でつくる「20/40フォーカスグループ」、若い女性オストメイトの会「ブーケ」