人工肛門ってどういうもの? いまだ進まない「排泄障害」への理解
ナイーブな問題だけに、悩みや問題が表面化しにくい
神奈川県の大学院生、関口陽介さん(28)。7年前の大学3年生のとき、横紋筋肉腫という小児がんが原因で手術を受け、人工肛門、人工ぼうこう保有者となった。両保有者らでつくる「日本オストミー協会」内の若者グループなどを通じ、積極的に情報を発信している しかし、現在住む横浜市の支部で40歳未満の会員はわずか3人。「同世代との出会いが少なく、恋愛や結婚など、若い世代としての悩みを打ち明けたり、相談できたりする機会がほとんどない」 医療機器メーカーへの就職が決まり、この春、実家を離れ、神戸で一人暮らしを始める予定だが、 「これまでの啓発活動と仕事を両立させたいが、忙しくなるので不安もある」と漏らす。 長野県の柿本聡さん(35)。27歳の時に直腸がんで手術し、人工肛門を持った。子どもたちに柔道を指導しながら、自らも選手として活躍する。 最近、ショッキングな差別に遭遇した。県大会を前に体を鍛えようと、近くの大手スポーツジムに入会を申し込んだ際、人工肛門についても話したところ、 「事前に電話で確認してほしかった」と入会を保留。「一人で着替えられるのか」「歩けるんですか」などと次々に失礼な質問を浴びせられたため、入会する気も失せたという。 「若い世代として、様々なことにチャレンジしていこうという気持ちを削ぐほどの無理解ぶりには呆れた」と怒りを隠さない。 若い女性オストメイトの会「ブーケ」が2013年10月、会員(158人が回答)にアンケートしたところ、約4分の1が、オストメイトであることが仕事に「影響した」と答え、うち3割強が「退職した」「パートタイムになった」と回答。「現在最も知りたいこと」(複数回答可)は、「就職・仕事」(25パーセント)、「対人関係」(23パーセント)、「恋愛・結婚」(11パーセント)などで、社会人生活やプライベートで悩んでいる現状が浮き彫りになった。 人工肛門・ぼうこうは「排せつ障害」という、当事者にとってナイーブな悩みであるがゆえに、なかなか悩みや問題が表面化しにくい。真山さんは「勤め先や友人関係など、日常で関係がある先々で、一人でも事情を知る“味方”がいれば、格段に生活がしやすくなる」と話す。著名な人が告白するたびに思い出すのではなく、そんな“仲間”を作りやすい社会に近づくよう、人工肛門・ぼうこうを持つ人々が自分の近くにいることを前提に、関心を持ち続けることが必要だ。