開発見直しで「220億円特損」、スクエニが抱える苦悩 収益悪化でゲームの開発方針を大幅転換へ
「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」――。国民的ゲームソフトを生み出してきたメーカーが試練に直面している。 【図表で見る】ゲーム大手の営業利益率の比較。スクエニの収益力低迷が目立つ スクウェア・エニックス・ホールディングス(HD)は5月13日に発表した2024年3月期決算において、主に2027年以降の発売を予定していたHDゲーム(家庭用ゲーム)の一部タイトルの開発を中止したことにより、過去最大となる約220億円のコンテンツ等廃棄特損を計上した。 さらに、開発を続けるタイトルについても販売予測を一部引き下げたことに伴い、約168億円に上るコンテンツ評価損などを売上原価に計上した。この結果、2024年3月期の売上高は3563億円(前期比3.8%増)、営業利益は325億円(同26.6%減)、純利益は149億円(同69.7%減)と、大幅減益に沈んだ。
■今後はタイトルを厳選していく スクエニでは、開発に着手したHDゲームの開発コストを「コンテンツ制作勘定」として貸借対照表上の資産に計上し、発売のタイミングで一気に損益計算書上の原価に計上している。このコンテンツ制作勘定は2023年3月期末に872億円まで膨らんでいたが、評価損や廃棄特損などにより2024年3月期末には485億円にまで縮小した。 今回の損失計上は、開発方針の見直しによるものだ。スクエニは「これまではトップライン(売上高)を稼ぐために、新作の発売タイトル数で勝負していたが、今後はよりタイトルを厳選しクオリティを上げていくことで、HDゲーム単独でも安定的に利益を創出したい」と説明する。
ゲーム業界ではヒット作の有無が業績を大きく左右するため、スクエニは本数を多く出すことでリスクヘッジを狙ってきた。ただ、開発人員などのリソースが分散したこともあり、一部の大型タイトルや、社内で作り切れずに外部に開発を委託したタイトルなどでは、期待通りの収益を得られず、結果としてHDゲームや全社の収益性の悪化をもたらした。 スクエニの2024年3月期の営業利益率は9.13%。直近数年の営業利益率で比較すると、同業のカプコン(前期実績は37.4%)やコーエーテクモHD(同33.6%)とは、20%以上の大差をつけられている。