「ニューオークション」が構想する、アートが浸透し循環する社会
木村:「NEW006」では「街とアート」というテーマでトークショーを開催したのですが、ワタリウム美術館の和多利浩一さんに登壇をお願いしました。美術館という枠を飛び越え90年代前半から街をアートで盛り上げていくための活動をずっとやってきた方です。インデペンデントでありながら街の余白を活用し、ユニークな取り組みをたくさん実施してきました。
僕が所属しているen one tokyoも、「アートやカルチャーを通して神宮前という街の価値をどう上げていけるか」というビジョンで活動しているので、その分野の大先輩である和多利さんに話を聞きたくて企画しました。オークション開催前にプレビューを1週間行っているので、今後もトークショーのようなイベントを行い、コミュニケーションが生まれる場にしていきたいですね。
また、オークションで扱う作品は特定のマーケットを意識していません。出品作品はコレクターやディーラーから委託を受けて集めているので、主催者側ではコントロールができず、作品が集まるにつれてその都度オークションの方向性が見えてきます。
「NEW006」ではトークショーに和多利さんが出演してくださったので、カタログの表紙はヨーゼフ・ボイスにしようとか、そこからジョン・ケージ(John Cage)やナム・ジュン・パイク(Nam June Paik)など、フルクサス(Fluxus)関連の作品を意図的に集めていったり、作品の繋がりを意識してラインナップを組んでいます。
――NFTアートが普及する中で、「ニューオークション」は“リアルな作品”とギャラリーのような“場所”を伴うフィジカルな形態を維持していると感じます。現代のトレンドで、自分たちの手法についてどう捉えていますか?
木村:オークションを取り巻く状況はコロナ禍以降変わってきています。今はオンラインで入札できるシステムが必須なので、来場しなくても世界中から入札できるよう、「ニューオークション」でもオンライン入札システムを整備しました。