「ニューオークション」が構想する、アートが浸透し循環する社会
また、オンライン参加の顧客に対して、画面越しにオークションの“イベントとしてのおもしろさ”を伝えられるよう試行錯誤していますが、やはり難しいですね。プレビューで実際にアートと向き合っていただき、トークショーなどのイベントを通してコミュニケーションをする。このような一連の体験におもしろさがあるので、初めて参加する方にはぜひ会場にお越しいただきたいですね。
アートに馴染みのない人々の共感を得て、社会にリンクするアクティビティに寄与したい。
――渋谷や原宿といったストリート・ファッションのイメージが強い街におけるアートやオークションの可能性をどのように捉えていますか?
木村:渋谷や原宿の街は、常に「ハレ」の日といいますか、訪れる人は何か刺激や感性を求めてきていると思います。
SAIがあるミヤシタパークは2つのエリアを繋ぐまさに通り道のような場所で、さまざまな人が訪れます。SAIで週末に展覧会を開催すると多い時は1日に1000人程度が来場するのですが、そのうちの8割はたまたま通りかかったという方です。
もちろん美術館で展覧会を開く事とは違いますが、何かを求めこの街を訪れた人が意図せずに来場して作品に触れる。そういう方々がどんな反応を示すのか、それはとてもおもしろいことだと思います。
――近年アートがファッションなど他のクリエイティブな分野に参照され、コラボレーションする機会が増えてきていると感じます。そうした状況をふまえ、「ニューオークション」の今後の展望について教えてください。
木村:他業種とのコラボーレーションで「ニューオークション」を活用することは常に考えています。以前あるアパレル企業から、「日本にはスケートパークが少ないので、建設の資金集めにオークションを活用したい」というような話しを受けたことがあります。
海外では、何かを新たに作りたいときにプロジェクトに賛同してもらうため、建設や運営資金を集めるためにアーティストに協力してもらう事例がよくあるので、日本でももっとそういうことができればなと考えています。スケートパークの案件は現実化していませんが、先述のヨーゼフ・ボイスの社会彫刻のように、アートを通じた社会や街への貢献はぜひ実現させたいですね。