「ニューオークション」が構想する、アートが浸透し循環する社会
また、循環を通してアートが自立していけるシステムの構築を目指し、還元金という制度を取り入れています。落札された作品の著作権者に対して、落札額の一部を還元金として支払う事で「ニューオークション」を通じた取引が少しでもアーティストの活動の支援につながることを目指して導入しました。アートの分野では、マーケットに強い作家もいれば、マーケットとは全く関係のない作家もいます。後者が作品を制作し続ける為には、国からの助成やさまざまな制度を活用するか、特定のパトロンのような存在が必要になるのですが、その格差があまりにも大きいと思っています。
アートは本来もっと自由なものだと考えています。例えばヨーロッパではパトロン制度が存在し、パトロンの支援を受けてアーティストが自由に活動していますが、日本にはそういった習慣がまだ根付いていないと感じます。今はまだそこまでには及んでいませんが、例えば「ニューオークション」の売り上げの一部をそういった作家や活動に提供し、制作活動をサポートしていくような事などができればと考えています。
マーケット以外の部分への貢献はまだ難しいところですが、「ニューオークション」の顧客にはこの考えが浸透してきています。
ヨーゼフ・ボイスが提唱した「社会彫刻」という考え方が好きなのですが、彼は1982年の「ドクメンタ7」でのプロジェクト「7000本の樫の木」で、資金を寄付で集め、会場のカッセル市に樫の植樹とともに玄武岩を設置しました。「生」を象徴する樫の木は立派に成長して街路樹となり、対をなす「死」を意味する玄武岩はベンチとして活用されています。
アーティストや作品を通して資金を集め、緑化という形で実際に社会や環境に還元していく。このような動きを「ニューオークション」で実現したいと常に考えています。
――今回の「ニューオークション」における新しい取り組みがあれば教えて下さい。作品のキュレーションやオークションにおいて気をつけていることは?