「ニューオークション」が構想する、アートが浸透し循環する社会
当初はオークションの参加経験のない方がイベントを楽しむような感覚で来場されていましたが、回を重ねる毎に真剣にアートを購入する方が増え、「オークションへの参加やカタログを楽しみにしている」という声も増えてきています。
「ニューオークション」は、プロディーラーや従来のアートコレクターだけではなく「アートが好きで美術館には行くけど、アートを購入したことがない」という方を対象に、アートを安心して購入できる場を作りたいという思いから始まりました。
また、当初からの目的の1つに、原宿や渋谷という街にオークションを根付かせる、ということもあります。ヨーロッパなどではそれぞれの街でオークションが日常的に行われていて、近所の人が犬の散歩のついでに立ち寄り、アートを購入するといったようなカジュアルなオークションを原宿や渋谷で開催したいと考えてきました。
「ニューオークション」が浸透して開催を楽しみにしてくれる人たちが増え、アートに触れて、実際に購入して家で楽しんでもらう。そして10年、20年後に環境が変わり手放したくなったら「ニューオークション」に出品してもらい、また別の作品を購入する。オークションを通して緩やかな循環を作りたいという当初からの考えが、実現しつつあると感じています。
――地域に根差してアートをめぐる緩やかな循環を作りたいという考えが、「ニューオークション」のステイトメントにある「持続的な循環」や「コミュニティ」に繋がっています。アートマーケットにおいてこの2つの要素に注目する理由は何でしょうか。
木村:「ニューオークション」はアートを流通させるプラットフォームではありますが、ビジネス的な数字を追いかけるだけの事業にはしたくない。緩やかに循環するような流通を作りたいんです。
ただ作品を売るのではなく、できる限り1つ1つの作品を丁寧に説明して、オークションを通じ、作品や作家にまつわる背景や意味を理解してもらうことが重要だと考えています。