「ニューオークション」が構想する、アートが浸透し循環する社会
パンデミック後、世界のアート市場は盛り上がりを見せている。2023年にはアートフェアをはじめとしたイベントの復活、ギャラリーによる増加といった要因が取引額拡大を後押しする傾向も見られ、リアルな場での作品鑑賞とコミュニケーションの重要性があらためて着目されている。 【画像】「ニューオークション」が構想する、アートが浸透し循環する社会
一方、日本のアート市場に目を戻すと現在もその規模は小さい。顧客層のボリュームという違いもあるが、そもそもアートに対峙する環境が大きく異なる。欧州のような文化政策やアーティスト育成支援体制が整っておらず、ギャラリーの数も少ないため、人々が芸術に触れられる場が相対的に少ない。
そのような状況下で21年にen one tokyoによる渋谷、原宿の街を起点に発足した「ニューオークション(NEW AUCTION)」は、従来型の一部の富裕層や業界向けの閉鎖的なアート販売ではなく、一般の人々も目にすることができるオープンスペースでのアート展示・販売を行う、その名の通り新形態のオークションハウスだ。
一般の人々が直接アートに向かい合い、自発性や動機、社会に対する視点の啓蒙を受けるとともに、アーティストにとっても幅広い層に直接インパクトを与えることができるので、可能性が広がる。
さらにアートの持つ影響力を活用し、ファッションブランドとの協働や地域振興など、社会への関わりと貢献を構想している。
今回開催された第6回目のオークション「NEW 006」を経て、 ディレクターの木村俊介に抱負や今後の展望を聞いた。
渋谷・原宿の街にオークションを根付かせ、アートをめぐるあらたな循環を作りたい。
――「ニューオークション」のビジョンに「従来の概念に縛られず、新しい体験、新しい価値観を提供することを目指す」とあります。アートやオークションを通じたイノベーションの構想や事例について聞かせてください。
木村俊介(以下、木村):これまでオークションを6回開催してきたことで、顧客にも「ニューオークション」の存在が浸透して生きていると感じています。