『まる』荻上直子監督 自分が興味のある人から映画を発想する【Director’s Interview Vol.446】
『まる』10月18日(金)ロードショー アスミック・エース © 2024 Asmik Ace, Inc.
Q:沢田は堂本さん自身が持っているエッセンスが色濃く出ている感じがしましたが、沢田と堂本さん本人とのバランスはどのように取られたのでしょうか。 荻上:そこは堂本さん自身がすごくバランスを取っていました。撮影が始まってカメラを回す直前まで、いつも1時間~1時間半くらい私と堂本さんで擦り合わせを行いました。堂本さんが「こういうことでいいんだろうか?」と私に確認を取ってくれて、すごく丁寧に作り上げていった感覚があります。堂本さんがすごく努力した上で、沢田に近づいてくれました。 Q:具体的にはどんなことを話されたのでしょうか。 荻上:「このシーンの前がこうだから、今回はこういうことですよね」と、流れの確認を中心に話していたと思います。私が脚本を書いたくせに自分で分かっていない部分もあったので(笑)、そこをお互いに擦り合わせていきました。そのおかげで、堂本さんは沢田という役を十分に理解してカメラの前に立ってくださった。ブレみたいなものは全然無かったですね。 ただ、「今回は難しい」と仰っていました。若いときにやっていたお芝居では、自己主張して前に出ていき、自身がストーリーを作っていく役が多かったらしいのですが、今回はその逆で、周りから作用されていく受け身のタイプ。この“巻き込まれる感じ”が初めてだということもあり、そこは不安に感じていたらしいです。 Q:堂本さんと綾野さんの化学反応も面白かったですが、現場ではどのような感じでしたか。 荻上:端から見て、お互いに面白い出会いになったような印象がありました。変な言い方かもしれませんが、お互いを好きになっていたと思います。綾野さんが演じた横山の役は、当初はもっと嫌な奴のイメージだったのですが、綾野さんが堂本さんとお芝居をすることで、当初のイメージよりもチャーミングな役になりましたね。 Q:綾野剛さん、吉岡里帆さん、吉田鋼太郎さん、小林聡美さん、柄本明さん、そして、おいでやす小田さんなど、脇を固める役者さんがかなり豪華ですが、キャスティングは監督の希望通りだったのでしょうか。 荻上:そうですね。おいでやす小田さんも希望通りです(笑)。小田さんは映画に出演されるのがほぼ初めてだったようで、最初ガチガチに緊張していました。そこもちょっと可笑しかったですね。
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