『極悪女王』長与千種×白石和彌が語る。試合もプロレス技も演じたキャストたちは「毎日が戦いだった」
1980年代に空前の女子プロレスブームを巻き起こした「最恐のヒール」、ダンプ松本を描いたドラマ『極悪女王』がNetflixで配信された。 【画像】長与千種と白石和彌 ダンプ松本(松本香)役をゆりやんレトリィバァ、ダンプの宿敵で女性たちから圧倒的な人気を誇ったタッグチーム「クラッシュ・ギャルズ」の長与千種役を唐田えりか、ライオネス飛鳥役を剛力彩芽が演じている。もともとは「落ちこぼれ」であった香が、さまざまな葛藤や困難を経て悪名高いヒールに上り詰めるまでの物語を、すさまじい熱量で描いた作品だ。 長与千種本人がプロレススーパーバイザーとして参加し、リングシーンはほとんどすべてスタントなしで俳優らが演じたという。1980年代を再現したかのような本作は、いかにつくられたのか。撮影秘話や当時の知られざるエピソードもまじえながら、長与千種と白石和彌総監督が語った。
命を燃やしながら生きていた女子プロレスラーたち
―白石総監督は80年代当時の女子プロレスについて「魂を削って試合をしているようだった」と語っていましたが、ダンプさんやクラッシュ・ギャルズのお二人にはどのような印象を抱かれていたんでしょうか? 白石和彌(以下、白石):単純に、なんでこんなに大変なことを毎週やっているんだろう…と。小学生時代にダンプさんVS長与さんの敗者髪切りデスマッチ(※)を見て、ここまできたらいつか殺し合うんじゃないかと本気で思っていましたね。 でも撮影前に関係者にリサーチを行ううち、みなさん本当にピュアに、青春を謳歌しながらプロレスをやっていたんだと知りました。命を燃やしながらあの時代を生きていたんだとあらためて感じましたし、何よりみんな本当に豊かで面白い人生を送っているんですよね。プロレスラーの方々は本当に面白い話の宝庫でした。 (※)1985年8月、大阪城ホールで行なわれた全日本女子プロレスのダンプ松本と長与千種の試合。敗者は髪を切られることが決まっており、伝説的な一戦として知られている。 ―当事者である長与さんから見て、白石総監督が作り上げた『極悪女王』はいかがでしたか。 長与千種(以下、長与):昭和の時代からいまだに自分のなかで悶々としていたこともあったんですが、『極悪女王』ですべての答えが出たと感じました。現場で私たちを演じる皆さんを見ながら「そうだった。こういう気持ちだったんだ」と、日々かつての気持ちを思い起こしていましたね。完成したものを観たときの「これでやっと完結した…」という感覚はいまだ新鮮に覚えています。 白石和彌(以下、白石):ふふふ。