『極悪女王』長与千種×白石和彌が語る。試合もプロレス技も演じたキャストたちは「毎日が戦いだった」
「いつか本物になれるんじゃないか」 プロレスシーンを演じた俳優たちを見て
―監督も嬉しそうですね。長与さんはいまではダンプ松本さんとすっかり仲良しだそうですが、撮影中にダンプさんやライオネス飛鳥さんたちとやりとりはしていたんですか? 長与:「半端じゃないよ」と彼女たちにいつも言ってましたよ。何がすごいって俳優ですよね。私も最初はどこまでやれるんだろうと心配していたんですけど、気付いたら妥協が嫌いな俳優ばかりが集まっていて。だから私もいつしかプロレスラーの真似ではなく、本物になれるんじゃないかなと思うようになりましたし、彼女たちもその意気込みで練習していました。 ―俳優の方々は本当に見事でした。特に松本香がダンプ松本へ覚醒するゆりやんさんの変貌っぷりはすごすぎて。 白石:もちろん現実のダンプさんは、もっと多くの要因や流れのなかでヒールとして生きていくことを決めたんだと思います。でも、ドラマの短い時間で描くにはコントラストを高くパキッといったほうが見所になるだろうし、その落差はできるだけつくってほしいとゆりやんにお願いしました。 「芸人をやっていて周囲に置いていかれた気持ちになったことはある?」と聞いて、似た感情を一緒に探してみたり。彼女がダンプ松本としてヒールに覚醒するまで4~5か月撮影していましたから、それまでコツコツと役のなかの感情や疎外感を積み重ねていっていましたね。 ほぼ順撮りだったから、彼女のなかで暴れたいのになかなか暴れられないというストレスもあったと思いますよ。その溜まったものが一気に溢れ出て、あの演技が生まれたんじゃないかな。 ―長与さんは自分を演じている唐田えりかさんや、ほかの俳優の皆さんを直近で見ていかがでしたか? 長与:徐々に自分がそこにいるかのように思えてきましたね。ライオネス飛鳥役の(剛力)彩芽ちゃんと一騎打ちの試合をやるシーンあたりからは特に。 私とダンプさんは実際に落ちこぼれで、ご飯をまともに食べられていなかったのも本当の話なんです。そういった姿を演じる彼女たちを見ながら、二人でリングの上に寝っ転がって「お金あったら何が食べたい?」って言い合ってたことを思い出したり。本当にあのときのまんまじゃんって。 白石:自分の人生を追体験するなんて普通ないですよね。印象的だったのが、冒頭のビューティ・ペアが歌うシーンを撮影中のこと。長与さんが現場に入ってきて、二人を見るなり大号泣してました(笑)。 長与:本当にあのまんまだったから。「目の前に当時のジャッキーさんとマキさんがいる!︎」って(笑)。お二人が揃っている姿って、私がプロレスラーになってからは見たことがないんですよ。そのころにはもう解散されていたので。 だから、“かけめぐる青春”を歌われていたのを見たときに「神がここに降臨したんだ……」って思わず感極まりましたね。ヤバいものを見たという気持ちになって、それからビューティ・ペアを演じるお二人とは喋りづらくなっちゃって…。 白石:あはは! 本人に見えちゃってる。