「週1回の休漁」でお金をもらえる?衝撃の日本漁業の資源管理、このままでは国際条約に抵触する可能性も
形骸化する建前、「週1回の休漁」で所得補償
そこで筆者は21年漁業・養殖業生産統計において漁獲量が多い上位10道県(北海道・茨城・静岡・長崎・宮城・三重・千葉・宮崎・島根・鳥取)を対象として情報公開請求を行い、個々の資源管理計画及び各道県によって行われた資源管理計画に対する評価・検証の詳細について入手するよう試み、このほどその結果を含めた内容の一部を専門誌でも公にした(真田康弘「漁業補助金とWTO漁業補助金協定:我が国の漁業補助金の現状と協定が国内政策に与えるインプリケーション(新・環境法シリーズ/第145回)」『環境管理』2024年3月号)。 表1は、各道県における資源管理計画数と資源管理計画に含まれる自主管理措置の内訳表したものである。北海道は漁協別である一方、茨城は漁業種別、静岡や長崎県は漁協における魚種・漁業種別等で資源管理計画が策定されているため、各道県における資源管理計画数には相当程度のばらつきがあるが、多くの道県において共通して見られるのが、休漁とクロマグロの規制に関する措置が相対的に多く、なかでも休漁が非常に多いという点である。 このうちクロマグロに対する規制は、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)という西太平洋海域におけるかつお・まぐろ類を扱う国際機関によって決定された漁獲規制強化を受けたものであり、この取組の実施に関するものである。また、従来補償基準額は漁業収入が右肩下がりになると補償額もそれに対応して減額されるが、クロマグロについては基準額が固定され、その95%が補償される手厚い内容となっている。
では、その「休漁」の中身はどうなっているのか。それを示したものが図2である。 一部の道県では休漁措置の内容が、週1日を休漁とするか、換算して週1日(年間7分の1(約14.3%)、約52.1日)以下のものが非常に多い。しかしこのような「週一休漁」が資源管理に有効であるかは甚だ疑問と言わざるを得ない。 しかも、「週一休漁」という形ばかりの管理計画を策定し、土日や市場の空いていない日、あるいは海が時化た日に休みを取るだけで、漁獲収入が減少した場合、その9割までが多額の税金が投入されているプログラムで補填されることになる。 さらに問題なのは、漁獲量が都道府県別で群を抜いて多い北海道、並びに漁獲量第9位島根県が、資源管理計画の内容の開示を一切拒否したことである。こうした資源管理計画が全くの自主的なものであるのならば、それで良いのかも知れないが、これは水産予算の中で最も拠出されている項目の一つとであり、国民の税金が投下されている。当然説明責任が果たされて然るべきである。それとも、実は資源管理計画の中身が形骸化しているものが多いので公開したくないとでも考えているのであろうか。そう訝られても仕方がない。 以前の拙稿でも指摘したが、北海道と島根県については国の指針で求められている計画の定期的なレビューと見直しというPDCAサイクルもほぼ機能していない。国が定めた「資源管理指針・計画作成要領」によると、策定後4年を経過した次の年度に外部有識者が参加する資源管理協議会が計画の内容が適切かどうか等について評価・検証し、この結果を踏まえ、管理措置の内容等の見直しを図ることとなっているが、直近の5年で行われた評価結果を情報公開請求で開示したところ、島根県は該当する文書すら存在せず、北海道については全てが合格の「A」評価となっている。これでは評価と見直しは単なる絵に描いた餅である。