<119年越しの夢・’24センバツ耐久>軌跡/下 「課題練習」で成長実感 合宿乗り越え、絆と自信 /和歌山
近畿地区大会を終え、チームはセンバツに照準を合わせた。誰に言われたわけでもないが、毎日欠かさず午前7時からの朝練習が始まっていた。授業のある平日だけでなく、土日も同じ時間に選手たちがそろう。その中心はいずれも内野手で、2年生の赤山侑斗、岩崎悠太、沢剣太郎の3人だった。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 遊撃手の沢は2年に上がる前からレギュラーを務める実力者だが、近畿地区大会の京都外大西戦で一塁に悪送球し、そこから失点につながった苦い記憶があった。「あの時は練習でも経験のなかった角度(の送球)で、焦りが出てしまったと思う」。動画で近畿地区大会のプレーを何度も見返し、「『もっとやらないと』という気になった」と振り返る。 チームは昨年末、串本町まで2泊3日の合宿に出向いた。例年にはない、センバツを見据えたものだった。普段は連日行うことのないトレーニングや捕球の反復練習など、基礎固めの3日間。80メートル四方×3周を4セット走るメニューでは、極限まで心身を追い込んだ。捕手の川合昌翔(2年)は「きついトレーニングを皆で乗り越え、絆が深まった」と話す。 学校のグラウンドはサッカー部や軟式野球部と共有しており、外野部分まで使えるのは他の部活が練習を終えてから。日ごろの練習には選手たちがそれぞれの弱点を克服するための「課題練習」という時間があり、年明けは一層気合が入っていた。「ミート力の強化」の場合、細いバットを使ってバドミントンのシャトル打ちにひたすら励む選手たちの姿があった。 センバツ出場の知らせを受けた1月26日、井原正善監督(39)は「秋に一試合一試合、そして1週間ごとに成長してくれた」と選手たちをたたえた。「全国の良い投手に負けないぐらい、力強いピッチングをしたい」とエースの冷水孝輔(2年)。「自分たちの野球をすることが勝利の近道」と信じ、トレーニングに励む毎日だ。 2月に入り、朝練習は守備に代わってバッティングが中心となった。朝の気温が少し上がり、体を動かしやすくなったためという。今春のセンバツで本格導入される低反発の金属製バットをできるだけ多く振り、それぞれの感覚に落とし込む狙いもある。赤山は「甲子園で勝った姿を見せて、皆に『やったよ』と言いたい」。創部以来の夢がかなう春は、すぐそこに見えている。【安西李姫】