「愛犬を安楽死させて一緒に埋葬して」アラン・ドロンの遺言に批判殺到 飼い主の死後、ペットはどうなる?
最近、88歳で死去したフランスの俳優、アラン・ドロンさんに批判が殺到しました。原因は、生前、「自分が亡くなったら、愛犬を安楽死させて一緒に埋葬してほしい」と遺言していたからです。 【実際の画像】「殉葬して」と言われたものの九死一生を得たアラン・ドロンさんの愛犬 この遺言をめぐり、フランス国内では批判が巻き起こったと報道されています。ドロンさんの遺族はその後、遺言は執行せずに、愛犬の安楽死はしないと表明したそうです。愛犬は、ドロンさんの遺族が飼い続けると報じられています。 誰かが亡くなった場合、親族などに遺産が相続されますが、日本ではペットはどのように扱われるのでしょうか。大野貴央弁護士に聞きました。
●ペットは法的には「相続対象」
――そもそもペットは、法的にどのように解釈されているのでしょうか。 ペットは生き物ですが、民法上は、家具や車などと同じように「物」と扱われます(民法85条)。 したがって、飼い主が亡くなった場合は、遺産として相続の対象になることが原則です。 遺言書に、ペットの次の飼い主(取得者)が指定されていれば、原則としてその人が新たな飼い主になります。(※遺言書による取得者の指定は、相続人以外の第三者にすることもできます。これを「遺贈」と言います) 遺言書がなければ、いったん相続人全員がペットの所有権を共有する形になるため、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、新たな飼い主(取得者)を決める必要があります。
●「愛犬を殉葬」の遺言、法律上無効に
―― もしも亡くなった飼い主がアラン・ドロンさんのように「愛犬を殉葬してほしい」と遺言していた場合、遺族はそれを執行する義務はあるのでしょうか。 結論から言えば「愛犬を殉葬してほしい」という内容の遺言があったとしても、その部分は法律上無効になり、遺言どおりに執行する義務はないと考えられます。 ペットは民法上「物」にすぎないのですが、「動物の愛護及び管理に関する法律」という特別法によって保護の対象になっています。 同法44条では、一定の動物を、みだりに殺し、傷つけ、虐待や遺棄(逃がしたり捨ててしまうこと)を禁止しており、これに違反すると、懲役や罰金の刑罰を受ける可能性があります。 つまり、飼い主が亡くなったからと言って、ペットも巻き添えにして殺してしまう「殉葬」は、動物愛護管理法が刑罰をもって禁止する「犯罪行為」に該当するおそれがあります。犯罪行為を指示する内容の遺言は、少なくともその部分は公序良俗に反するといえますので、法律上無効とされる可能性が高いでしょう(民法90条)。 なおペットが病気や寿命で長く生きることが難しい場合、「安楽死」が許されることもあるようですが、合法といえるかどうか、明確な基準はありません。そのような事情があれば、本当に安楽死させることがやむを得ない状況なのか、獣医師などの専門家に相談された方が良いと思います。