「もう復路優勝しかない」箱根駅伝“失意の往路4位”から駒澤大が青学大の完全優勝を阻止できたわけ…「ただでは転ばない」決意で得た“収穫”
大エースの復活
3つ目の収穫は、大エースの復活だ。 「圭汰の復活も大きな収穫です。10か月ぶりのレースで不安はあったと思うんですが、よく走りました。彼は、これから世界に出ていく選手。田澤(廉)や(鈴木)芽吹がそうだったように、いるだけで選手の刺激になるので、来季は強いエースとしての活躍はもちろん、チームにそれをどう還元してくれるのか楽しみですね」 藤田監督は、そう言って表情を崩した。 その佐藤は安堵の表情を見せた。 「走る前は不安でいっぱいでしたけど、思った以上に走ることができました。怪我でチームを離れていた分、少しは貢献できたのかなと思います」 こうした収穫をいくつも重ねていくことが、チームを強くするためには不可欠だ。
史上最速2区の衝撃
一方で箱根駅伝そのものに目を向けると、過去の箱根とは異なり、今の時代を反映するシーンがいくつか見られた。藤田監督は、6区で野村昭夢(青学大4年)が出した56分台にも驚いたが、とりわけ衝撃を受けたのが、2区だったという。 「2区で65分台が3人(日本人2人)出たり、68分台で最下位というのを見ると、これはとんでもない時代になってきたなと思いました。2区は今後、最低が68分台になってくると思うので、そう考えると従来のタイム設定や、指導者の視点が昔の感覚でやっていると時代にあっという間に置いて行かれる感じがします。 青学大の原(普)監督は、(10000m)27分台の選手を10人並べる時代が来ると言っていましたが、それは決して夢物語ではなく、もうすぐそういう時代が来るんだというのを感じました」 中央大が今回往路の1区から3区で実行してみせたように、10000m27分台を3人並べると、突っ走る駅伝が可能になる。だが、周囲が27分台で同じレベルになってきた時、どういうレースになるのか、ちょっと想像がつかない。
際立った青学大の強さ
また、今回際立ったのは、やはり青学大の強さだった。 「青学さんは、とにかく4年生が強かった。それに2区、5区、6区で区間新ですからね。山の強さも群を抜いていました。復路のつなぎではうちが有利かなと思うところがあったんですが、詰められはしても逆転できなかったので、青学大に前を行かせてはいけないですね。 ただ、来季は強い4年生が抜けるので、その影響はあると思います。特に山ですね。それでもチームを作っているのが青学大なので油断はできないですが、来季、うちはワクワクするようなメンバーが揃ってきたので、十分勝負していけると思っています」 駒澤大としては、勝負には負けたが、絶妙な区間配置をすることで来季の活躍が期待できる選手の“約束手形”をごそっと得た感じだろう。ただ、今季は出雲、全日本、箱根とすべて2位に終わり、目先にぶらさがっていたそれぞれの優勝をあと少しというところで逃してきた。
“シルバーコレクター”脱却へ
「駒澤大は勝たなければならないチーム」と藤田監督、選手たちが常々言っているだけに、“シルバーコレクター”という位置づけに、誰もが悔しさを抱えている。 「来季は、もう2位はいりません」 藤田監督は、そう言い切った。 大八木総監督は、監督5年目で箱根駅伝優勝を実現した。恩師の後を継ぐ指揮官だが、5年も待つつもりはない。来季、三大駅伝すべてを獲りにいく――。
(「箱根駅伝PRESS」佐藤俊 = 文)
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