<挑戦者たち・センバツ’23・山梨学院>/上 ライバルに勝利で勢い 「一戦必勝」誓い、夢舞台でも /山梨
2022年秋の関東大会を制し、第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)への切符をつかんだ山梨学院のグラウンドに掲げられたスローガンは、「俺たちはチャレンジャー」だ。「王者ではなく挑戦者。甲子園では一戦必勝の気持ちで戦う」と誓う山梨学院ナインの軌跡を追った。【竹田直人】 昨秋の県大会では、1、2回戦はコールド勝ちで順調に突破。ところが一転、ライバル東海大甲府との準々決勝は苦しい展開に。吉田洸二監督(53)は「あの展開から勝ちをもぎ取れたのは大きかった」と振り返る。 2―1で迎えた七回、相手に適時二塁打などで一挙4点を奪われ、逆転を許した。この大会で調子を上げられなかったエースの林謙吾(2年)も、この回に無念の降板。主将の進藤天(2年)は「新チームになってから、中盤以降に逆転され、そのままズルズルと負ける試合が多かったので、少し不安になっていた」と明かす。 しかしその裏、打線が底力を見せた。2死無走者から3番の岳原(おかはら)陵河(2年)が安打を放つと、高校通算44本塁打の4番・高橋海翔(ひろと)(2年)が左越えに2ラン。さらに6番の大森燦(2年)が適時打を放って一気に追い付いた。続く八回、8番の二村仁功(ふたむらにこう)(1年)が三塁打を放つと、2番手投手としてマウンドにも上がっていた1番・星野泰輝(2年)がスクイズを決めて逆転に成功し、競り勝った。 殊勲の高橋は「いつもはつなぐ打撃を意識しているが、あの時だけは『自分の一打で流れを変えてやる』と決めていた」としてやったり。星野も「1番打者としての役割をしっかり果たせたのでうれしかった」と話す。 勢いに乗ったチームは準決勝、決勝と大勝を収めて関東大会へ進出。吉田監督は「東海大甲府戦がターニングポイントだった。あの勝利でチームは勢いに乗った」と振り返る。 関東大会では、エースの林が覚醒した。中学までは軟式野球に取り組んだ林は「糸の縫い目と(軟式球の)ゴムは全然感触が違う。いまだに違和感がある」と打ち明ける。高校入学後、初めて登板した県大会では納得のいく投球できなかったというが、「場数を踏むごとに、楽に投げられるようになった」。 関東大会では、最速139キロの直球と100キロ台のカーブなどを交えた緩急がさえ、防御率は0点台をマーク。進藤は「林がもたらした勢いにチーム全体が乗れた。このノリを甲子園でも再現させたい」と意気込む。 関東王者として臨んだ明治神宮大会では、初戦で英明(香川)に7―10で敗退したが、指揮官の表情は明るかった。チームは22年、春夏連続で甲子園に出場したが、いずれも1得点しか挙げられず初戦で敗退した。吉田監督は「神宮では全国でも点を取れたことが収穫だった。挑戦を続けていけば、甲子園でも十分戦える」と力を込める。