《便秘、冷え、不眠、がんリスクも》「腸カビ」と「ゾンビ腸」とは? あらゆる不調を引き起こすメカニズムと対策を医師が解説
カビの増殖が心身に悪影響を与える
そうして腸で生き残ったカビは、人間の食べたものをえさにどんどん増殖していく。特に甘いものはカビの大好物だ。 「カビの増殖は健康にさまざまな害をもたらします。例えば、カビが腸内で糖を食べることで起こりうるのが低血糖です。エネルギー源である糖をカビに横取りされることで、自律神経障害を引き起こすこともあります」 「甘いものばかり無性に食べたくなる」「いくら食べても満足感がない」のは、あなたの腸にもいつの間にかカビが入り込み、すくすくと育っているせいかもしれない。 「カビは腸壁に食い込み、粘膜を溶かしながら少しずつツタが伸びるように増殖していきます。健康な腸壁からは、粘膜を守り免疫機能を支える『IgA抗体』というたんぱく質が分泌されますが、カビの出す酵素はこれを分解してしまうので、免疫力が低下します」 増殖したカビは、ガスやアルコールなど、さまざまな毒素を産生する。ガスによるお腹の張りは栄養の吸収を阻害し、腸内でアルコールがつくられると、まるで酩酊しているかのようなめまいや頭痛、イライラ、抑うつ、吐き気、泣き上戸や笑い上戸といった情緒不安定を招く。 「カビ自身が『アラビノース』という糖をつくることもあり、これは体内のたんぱく質を変性させ、自己免疫疾患や代謝異常を引き起こします。腎臓結石や頭痛、関節炎などを招く『シュウ酸』も、カビによって腸内でつくられます」
日本人の6割が腸が“ゾンビ化”?
こうしてカビや悪玉腸内細菌で汚染された腸は「正常な働きを成せなくなりゾンビ化する」と話すのは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんだ。 「健康な腸はピンク色をしていますが、有害物質で満たされて充分な働きができなくなった『ゾンビ腸』は黒ずんでいるので、内視鏡を使えばひと目でわかります。ゾンビ化した腸が排出した毒素が血流に乗って全身に届くと、認知機能にも影響します。1000人を対象にした調査では、現在、日本人の6割がすでに腸がゾンビ化していると考えられる。特に40代以上の女性に多いこともわかっています」(小林さん) 腸からの毒素は脳だけでなく全身にまわり、あらゆる不調を引き起こす。放っておくと、便秘や下痢などの消化器障害、冷え、心臓や呼吸器の障害、低血圧、皮膚のかゆみ、眠気、不眠、目のかすみなど、あらゆる不調が起きる。悪化すると統合失調症や大腸がんなど、一生を左右するような大きな病気につながる場合もあるため、不調のサインが小さいうちにしっかりと対策をしておくべきだ。 「カビそのものはもちろん、カビのえさになる砂糖や果糖ブドウ糖液糖を含む甘いものや清涼飲料水のほか、腸内細菌のバランスを乱すとされる超加工食品(カップ麺や菓子パンなど、加工の程度が非常に高い食品)は避けましょう。 同時に、にんにくや梅肉、りんご酢、グレープシードオイル、ココナッツオイルなど、抗真菌作用のある食品を積極的に摂ってほしい。オレガノやローズマリー、シナモンといったハーブもおすすめです」(内山さん・以下同)