ハリルJを変化させたFW大迫の得点感覚。サウジ戦の切り札となれるのか?
ゴールへ向かっていく姿勢。このパスを絶対に決めてやるという執念。そして、いざシュートを放つ刹那に、冷静沈着に相手の動きを把握する落ち着きぶり。センターフォワードに求められるすべての条件に対して、大迫勇也(ケルン)はほぼ満点の回答を一発で示してみせた。 オマーン代表をカシマスタジアムに迎えた11日の国際親善試合。昨年6月のシンガポール代表とのW杯アジア2次予選以来、約1年半ぶりに日本代表へ招集された大迫は前半32分、同42分に連続ゴールをゲット。チームを4‐0の快勝に導き、鹿島アントラーズ時代に慣れ親しんだスタジアムへ詰めかけたファンやサポーターの喝采を浴びた。 3シーズン目を迎えたケルンでレギュラーの座をゲット。自信を手土産に帰国し、茨城県内で行われていた短期キャンプに合流した大迫に対して、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督はある注文を出していた。 「ポジション移動について、頭のなかを切り替えてくれ」 ケルンでは186センチ、73キロのサイズを誇り、U‐21フランス代表に招集された経験のあるアントニー・モデストとツートップを形成。昨シーズンに15ゴール、今シーズンもすでに11ゴールをあげて得点ランク2位につけるなど、圧倒的な存在感を放つモデストの周囲を衛星的に動き回る役割を完璧に演じ、オーストリア人のペーター・シュテーガー監督の厚い信頼を勝ち取った。 帰国直前の今月5日のブンデスリーガでケルンと対戦。3バックで組む最終ラインを統率するリベロとして1‐0の完封勝利に貢献した長谷部誠(フランクフルト)によれば、いわゆるセカンドストライカーとして神出鬼没的な動きを見せ続けた大迫が「相手チームのなかで一番嫌な選手だった」という。 「最終ラインの裏にも抜けるし、引いてボールも受けるし、サイドにも流れてチャンスも作られた。日本代表でサコ(大阪)に求められるのがワントップなら、その点はケルンとはちょっと違う部分があるけど、いずれにしてもサコが入ることでまた新しい形が生まれるんじゃないかと思います」 果たして、ハリルジャパンでは初先発を果たした大迫が任されたのはワントップだった。トップ下に配置された清武弘嗣(セビージャ)、右ウイングの本田圭佑(ACミラン)、左の齋藤学(横浜F・マリノス)との距離感を保ちながら、基本的には相手ゴール前で常に存在感を放つプレーが求められる。 ゆえに指揮官から「頭のなかを切り替えてくれ」と注文されたわけだが、大迫は例えるならロボットのように、与えられた指示を忠実に実行したわけではなかった。 「ゴール前から動かないで、というよりは、ボールがくるときにはゴール前にいて、という意味だと思った。サイドに動いてもいいけど、やっぱりゴール前に最後にいるように、というのは心がけましたけど」