ハリルJを変化させたFW大迫の得点感覚。サウジ戦の切り札となれるのか?
期待に応えるだけでなく、自分だけにしかできない「彩り」も添える。実際、後半16分にFW岡崎慎司(レスター・シティ)との交代でベンチへ下がるまで、大迫は幾度となくサイドへ流れてチャンスの起点になろうと努めた。そして、肝心要な場面ではゴール前でストロングポイントを発揮する。 先制点の場面は左サイドから清武が送ったクロスに対して、ファーサイドで本田と空中で重複しかけながら、譲ってなるものかと強引にねじ込んだ頭を一閃。ボールを対角線上のゴール左隅へ流し込んだ。 圧巻は2ゴール目だ。右サイドでボランチ・山口蛍(セレッソ大阪)、清武、本田がパスをつなぎ、相手を崩している間はゴール中央に陣取り続ける。そして、本田から清武にボールがわたった際に、瞬時に細かく上下動することでそれまでマークされていたDFマブルークの背後で完全にフリーとなる。 清武がワンタッチで出したスルーパスを、半身状態から右足でトラップ。左足でシュートを放つ位置にボールを置くと、すかさずMFサレハが食らいついてきた。そうした相手の反応も、すべて想定内だったのだろう。大迫は体を時計回りにターンさせながら、左足でボールを右側にちょこんと動かしてサレハを置き去りにする。次の瞬間、体を沈めながら右足を軽く振り抜き、コースが空いていた左隅へとボールを流し込んだ。 「ゴールの形としては1点目もいい形で入れましたし、2点目も落ち着いてターンできた。ゴール前では落ち着くことが大事だなとあらためて思いました。内容より、得点を取ることしか考えていなかった。トップ下がキヨ君(清武)だったので、任せながらゴール前でパワーを使えるように。フォワード一人じゃどうにもならない。周りとの関係がないとダメだし、今日は上手くオレのことを見ていてくれたから、ゴールに向かうことができた」 大迫に不安材料があるとすれば、約1年半のブランクにもたらされる周囲とのコミュニケーション不足だった。しかし、ともに1990年生まれの26歳で、ロンドン五輪アジア最終予選やW杯ブラジル大会で同じピッチに立った清武とは、空白期間にスポイルされることのないホットラインが築かれていた。 清武が言う。 「一緒にロンドン五輪には行けませんでしたけど、サコとはその予選からずっと一緒に戦ってきたし、あいつ以上にボールが収まるフォワードはいないと思っているので。サコがどっしりと前で構えてくれることでタメもできた。ケルンでずっと試合に出ているし、そこで磨かれた得点感覚というものも出してくれた。いまのサコにはそういう勢いがあると思う」