桑野信義、トミーズ雅、「ガキ使」出演芸人も…「大腸がん」なぜ増加? 予防法と発症後の最新事情【専門医解説】
■ますます進む大腸がん治療技術、結果として人工肛門(=ストーマ)の造設は1割程度まで減少
有名人にも広がる大腸がん。厚生労働省が公開した「全国がん登録 罹患数・率 報告 2020」によると、国内の大腸がん患者は14万7,725人(男性8万2809人、女性6万4915人/総数は男女および性別不詳の合計)。日本で一番罹患率の高いがんになっている。 大腸がん治療のエキスパートとして知られる高橋慶一医師(グレースホームケアクリニック伊東 院長)は、「1960年代の罹患者数は4、5000人ほどでしたが、2019年頃には7万人を超え、右肩上がりに増えています」と詳述する。 大腸がんが増えている背景には何があるのだろうか。 「一番は高齢者の増加です。大腸がんは男女ともに40歳代から増え始め、年齢を追うごとに罹患率が高まります。つまり、かかりやすい高齢者層自体が増えたことによって全体の数が多くなっている。そして、これは以前から指摘されていますが、牛肉や豚肉などの赤身肉や、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉の摂取量の増加も関連しています。ただし、注意してほしいのは、肉をたくさん食べたから大腸がんになる、とイコールで考えないこと。あくまでも統計からそういった傾向がある、関連があるということです」 超高齢化社会の到来や現代人の生活スタイルからみても、今後、さらなる増加が予想される大腸がんだが、「日本の大腸がん手術は技術が高く、そこはひとつ安心してほしい」と高橋医師。 「現在の大腸がん手術による切除率はどのステージにおいても高く、平均97%です。内視鏡治療の進歩により一部の早期大腸がんに対して、内視鏡的に治療が可能になっています。また、腹腔鏡下手術およびロボット支援手術が一般に普及。お腹を大きく切らなくても5つほどの小さな穴を空けるだけで手術ができるようになりました。かつては直腸がん手術の30%程度が人工肛門=ストーマになっていましたが、手術技術の進歩により、ストーマを造設する頻度は10%程度になっています」 治療成績においても、ほかのがんに比べ「比較的向き合いやすく予後も悪くない」と続ける。 「大腸がんの5年生存率は約86%です。5年生存率が約90%の乳がんに比べるとやや低いですが良好な部類と言えます。患者数が多いため死亡数はどうしても多くなりますが、向き合いにくいがんではありません。治療法も豊富で、ほかのがんでは抗がん剤治療を見送るような年齢でも、大腸がんでは治療を続けることも珍しくありません。5年ほど前から、新たながん治療法として注目を集める『免疫チェックポイント阻害剤』を用いた免疫療法も使えるようになりました」 大腸がんに限ったことではないが、粒子線がん治療施設が全国的に広がっているのも治療の面では、特筆すべきことと言う。 「重粒子線・陽子線の粒子線がん治療はがん病巣にピンポイントで放射線を照射できるため、副作用が少ない。さらに、これまでの放射線治療が効きにくかったがんへの効果も報告されています」 大腸がんにかかる人は増えているが、医療の進歩とともに治療の選択肢もまた、広がってきている。