22年原料高騰の深い爪痕 食品メーカー原価率、過去最悪の79%超に達していた
経済産業省が6月27日に公表した22年度の企業活動基本調査(確報)で、この時期に加速したコストプッシュインフレの食品業界への影響度が明らかになった。同年度の食料品製造業の売上原価率は79.3%で、コロナ前の19年度に比べ4.4ポイント上昇。世界食料価格危機といわれた08年度(76.9%)をしのぐ水準となり、営業利益を激しく圧迫した。
経済産業省調査でコスト実態明らかに
企業活動基本調査は従業者数50名以上で資本金3000万円以上の企業を対象とし、業種ごとの単年度業績や従業者数、研究開発などの事業活動状況を明らかにするもの。22年度分の調査では、21年以降の原油・穀物騰貴に端を発するコストアップの影響が注目されていた。 それによると、食品製造業の売上原価率は既出の通り79.3%(前年比1.9ポイント上昇)で、21年度(77.4%/前年比2.5ポイント上昇)に続き大幅に上昇。原材料費などの高騰を販管費率の圧縮(18.0%/同1.1ポイント低下)でカバーできず、営業利益率が大幅に下落(2.7%/同0.9ポイント低下)した。22年秋には酒類・加工食品全般で空前の値上げラッシュが始まっているが、急速な原価上昇に価格転嫁が全く追いついていなかったことが読み取れる。 これに対し、食料・飲料卸売業の22年度実績は売上原価率89.0%(前年比0.2ポイント上昇)、販管費率9.7%(同0.3ポイント低下)、営業利益率1.3%(同0.2ポイント上昇)となっている。原価率の上昇幅が製造業に比べ小さいのは、仕入価格の上昇から販売価格の引き上げまでのタイムラグを最小限に抑えていたためとみられる。さらに値上げによる総売上げの増加が物流費などの販管費を薄める構図となり、営業利益率がわずかに改善した。 一方、飲食料品小売業は売上原価率69.8%(前年比0.7ポイント低下)、販管費率28.0%(同0.4ポイント上昇)、営業利益率2.2%(前年比0.3ポイント上昇)という状況だ。卸売業と同様の速やかな価格転嫁と粗利率の高い惣菜の拡大などを背景に、原価率は21年度(70.5%/同1.4ポイント低下)に続き縮小。逆に人件費やエネルギーコストの上昇で販管費が膨らむ構図となっている。 飲食サービス業は売上原価率(51.4%/前年比0.4ポイント低下)と販管費率(47.1%/同3.1ポイント低下)がともに縮小し、営業利益率(1.5%/同3.5ポイント上昇)が大幅に改善した。メーカー・卸・小売とは全く異なる動きとなっているが、これは20~21年のコロナ禍での営業制限に伴う大幅減収の反動に負うところが大きい。営業利益率はコロナ前の19年度(3.7%)に比べ2.2ポイント低い水準であり、業種存亡の危機からようやく半歩抜け出した段階であったと考えられる。 上場食品関連企業の前期業績からも、23年度は製造・卸・小売・飲食ともに大幅な収益改善が見込まれるが、人手不足による人件費・物流費の増加などで販管費率は各業種とも悪化に向かっている可能性がある。23年夏以降の円安と価格転嫁の遅れが、食品製造業全体の売上原価率にどの程度の影響を及ぼしているのかも注目される。
日本食糧新聞社