「1人勤務」の養護教諭、プレッシャー禍で負担大 倍率7倍かつ経験者多数、潜在人材の活用は
救急処置のほか健康観察に書類作成、校内整備など
学校で子どもたちの健康と安全を守る「保健室の先生」、養護教諭。学校教育法において養護教諭は児童生徒の「養護」をつかさどると定められている。2009年に施行された学校保健安全法(学校保健法を改称し、一部改正)では、養護教諭がほかの教職員と連携して子どもたちの心身の状態を把握し、必要な指導を行うなどの役割が明確に規定された。ただ、各学校に1人しか配置されない場合が多く、負担が大きいという声も。元養護教諭で、現在はその魅力を発信する養護教諭インフルエンサーの「にこ」さんに、養護教諭の働き方の現状と課題を聞いた。 【表で見る】養護教諭の1日当たりの在校等時間は、令和4年度で小学校・中学校ともに9時間53分 学校で怪我や病気をした時、保健室で手当てをしてもらった記憶がある人は多いだろう。養護教諭の仕事として一般に知られるのは救急処置だが、実際には朝から夕方までさまざまな業務に追われている。 「8時台は登校中に怪我などをした児童生徒の対応をし、9時過ぎから健康観察の集計から始まります。各クラスが朝の会で確認した出欠状況や健康観察を集約し、管理職に報告するのです。感染症が流行しやすい時期であれば学級閉鎖をするかどうかの判断材料にもなります。 授業が始まると、怪我や体調不良で来室した児童生徒の対応をしながら、合間で毎月の保健だよりを作成したり、保健室の衛生材料の補充、校内の水道やトイレ回りの衛生チェックなどをします」 お昼前後にも重要な仕事が詰まっており「給食をゆっくり食べられた記憶はほとんどない」と言う。 「栄養士とともに給食の食物アレルギー関連の確認や対応をしたり、保健委員会の活動に合わせて、子どもたちと食前の“手洗いチェック”や、食後の歯磨き指導に関わることもあります。給食中は嘔吐などをした児童生徒の対応にあたります」 そのほか、保健室登校の児童生徒と一緒に過ごしたり、保護者の迎えを待つ子に付き添うなど、日々の中で同じ仕事はない。児童生徒を病院受診に連れていく場合は2~3時間を要するため、食事の確保をはじめ1日のタイムマネジメントは非常に難しいという。 「子どもたちの下校後は、その日の来室者記録をまとめます。どんな内容でどう対応したかなどを集計し、後々の分析にも活用します。そうした事務作業を終えると退勤ですが、途中でイレギュラーな対応が入ることが多く、事務作業をなかなか終えられない日もありました」 文部科学省初等中等教育局の「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(確定値)について」によると、令和4年度の養護教諭の1日当たりの在校等時間は小学校・中学校ともに9時間53分だった。 児童生徒の健康に関する記録は学外に持ち出せないため、事務処理が終わらない場合は子どもたちのいない休日に出勤してまとまった時間を確保している。