「築古アパートの立退料、いくらでしょうか?」大家から寄せられる相談に、ベテラン弁護士の意外な回答
築古アパートの立退料について、大家さんから具体的な金額を聞かれるケースが増えています。判例をもとに、実情を見ていきましょう。不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
「立退料の相場を教えて」という相談が増えているが…
不動産にまつわる相談として近年とくに増えているのが、大家さんからの「立退料の相場」についてです。 質問や相談を受けた際には、裁判事例を挙げて説明をすることになりますが、それらは世間で起きている立退きトラブルのほんの一例に過ぎず、また、世の中すべての立退きトラブルが裁判になるわけでもない、という点を忘れてはいけません。 実際に裁判となるのは、高額な立退料が見込まれる、いわば「裁判になりそうな土壌」があるケースです。もちろん、裁判をすることで少しでも有利にしたいという考えは理解できますし、実際に裁判で立退料を安くすることは可能かもしれませんが、弁護士を入ればそのぶんの費用が加算され、トータルで損になることもありえます。 国が立退料の算定表を用意してくれればいいのですが、残念ながらそのようなものはなく、弁護士や裁判所が参考にできるものは「裁判例」という先例に限られます。しかも、判例に残るものは比較的相場が高く、大家側は裁判に移行されるだけで不利になることは否めません。 率直な話、弁護士が介入する前段階において、実務的な相場で解決するのがいちばん安上がりだといえます。
弁護士を入れざるを得ないケースもある
とはいえ、弁護士に依頼しないと解決できない事例もあります。 たとえば、借主側が弁護士を入れてきた場合、大家側が相手の弁護士と対峙するのは相当なストレスです。そのため、大家側も対抗して弁護士を入れたほうがいいでしょう。 また、当事者同士だと怒鳴り合いになってしまい、まともな話し合いができないケースや、相手と連絡がつかないケースも、弁護士が間に入らなければ終わりません。 最後に、8室や10室などのアパートの建て替えをしたくても、最後の1室や2室の借主がどうしても出て行ってくれないというケースも、裁判所で話をすることになります。
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