銀行「無事、融資が通ります」…年収1,000万円超の43歳課長、“2億円”の物件で始めた〈不動産投資〉の悲惨な末路【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
不動産投資!?
時間にもお金にも余裕を感じる佐々木にその理由を聞くと、2年ほど前から不動産投資を開始したとのことであった。 現状ではネット収入(不動産収支から借入の返済を控除)が月額30万円ほどになっており、サラリーマンとしての給与と合算すると年間1,000万円を超える水準まで達したとのことであった。 いまでは、不動産所得がベースとなり勤務時間を意図的に減らし、残業もほとんどしない生活をしているとのことである。また、最終的には不動産収入による「FIRE」を目指しているそうだ。 佐々木は大学卒業後、IT業界に進んだため不動産に精通しているわけではない。それにもかかわらず、なぜ短期間で成功できたのか気になり、加藤は率直に質問することにした。 佐々木曰く、不動産投資セミナーに参加した際に不動産会社の社員と知り合ったそうだ。その後すぐに不動産業者による物件の選定、資金調達を2ヵ月程度で実施し決済を終え、決済後の物件管理、入居者付けなども含めてすべて任せているとのことであった。 佐々木は口座に入ってくる数字を確認するだけで、ローン返済も滞りなく進んでいることから、「不動産投資をしている苦労はほとんどない」と発言していた。 加藤は7年前に自宅を購入したが、妻とネットで情報収集を行い、そこから厳選した10件程の内覧を行ってから、やっと購入を決断した経緯がある。 不動産の購入にあたっては数多く見て決めるものであり、また賃貸業は自宅と異なり不動産に精通していない個人には金銭的にもリスクが高いものであるという認識であったため、この佐々木の発言には非常に驚いた。 とはいえ一方では、家族との時間を増やすためにもいまとは違う方法を取り入れる必要性を強く感じていたことから不動産投資に興味が芽生えた。
不動産投資をスタート
数日後、待ち合わせをした喫茶店に到着すると不動産会社の吉川はすでに奥のテーブルに着席しており、テーブル上にはいくかの資料が準備されていた。簡単に自己紹介を済ますと、早速吉川の提案が始まった。 吉川「佐々木さまから加藤さんのことは伺いました。お仕事が大変とのことで、その負担を減らすためにも不動産投資に関心があるそうですね。佐々木さまからもお話があったかもしれませんが、不動産投資は決して難しくはありません。私どもで物件の選定から融資、その後の管理まですべて引き受けさせていただきます」 加藤「佐々木からは簡単に話を聞きましたが、私程度の年収のサラリーマンが不動産投資なんかできるんですかね。住宅ローンもまだ残っているし」 吉川:「ローンの件ですね。本日、源泉徴収票をお持ちいただいているかと思いますが、見せていただいてもよろしいですか」 加藤から吉川に源泉徴収票の写し(3年分)を手交。 吉川「この3年間は年収1,000万円超えているんですね。かなり素晴らしい収入だと思います。私が懇意にしている銀行であれば資金調達は問題ありません。2億円程度の物件くらいならローンを引っ張れると思います」 加藤「そんな大きな金額ですか。住宅ローンがまだ4,000万円も残っているのに。それに、2億円の物件であれば、自己資金もそれなりに必要ではないですか」 吉川「私に任せてもらえれば自己資金は100万円程度でまとめてきます。ちょうど加藤さんにピッタリな物件があるので説明します。こちらは少し郊外ですが〇〇県の最寄駅からバス便の物件です。バス便ですが郊外は車で移動する人がほとんどなので、駅から遠くても心配ありません。また、土地が大きいので銀行の担保評価も十分に出ます。利回りについては満室想定の表面利回りで10%回っていますので金利4%の30年ローンを組んでも毎月手元には40万円ほど残る計算です」 加藤「自己資金100万円に対して年間500万円程度の収入ですか。それはすごいですね。ただ、〇〇県だと自宅から2時間ほどかかりますし、管理などは私には到底無理です」 吉川「その点は、当社で一括して借り上げをして、管理を行いますので、加藤さまにはご安心頂けるかと思います。仮に空室が出たとしても決まった賃料を当社がお支払いするので、心配は不要です。佐々木さまも同じように当社で物件を預かっております。加藤さんがお支払いするのはローンと固定資産税、損害保険料のみです」 加藤「そんな夢のような仕組みがあるんですね。内容はよくわかりました。一度銀行の審査もお願いできればと思います」 吉川「承知いたしました。それでは銀行に審査を依頼しますので、後日わたしのメールに自宅の所在がわかる謄本か固定資産税の課税明細、それと現在の住宅ローンの返済予定表、所有している金融資産、通帳や有価証券、保険の解約返戻金などがわかる資料を送付いただければと思います」 1ヵ月後…吉川からの申し出で再度の面談 吉川「本日はお忙しいところお時間いただきありがとうございます。加藤さまに朗報をお伝えしたくお越しいただきました。■■銀行からは加藤さまのローンの事前審査は無事に通るとのことです。自己資金もお伝えしたとおり100万円で済みます。また、物件がほかに流れないように当社のグループ会社で購入し抑えておりますので、確実に購入できます。最後に、佐々木さんの紹介でもあるので私から当社の社長に直談判をし、仲介手数料も1%で了承をとってきました」 加藤「この1ヵ月は仕事が忙しくて現地も見に行けていませんが、ネットの地図で周辺は確認しました。また、諸々活動いただきありがとうございます」 (その後、売買契約やローン契約などを締結し決済が完了)