「ナミビアの砂漠」「Cloud クラウド」の音楽を手掛けた渡邊琢磨が語る「映画音楽の魅力」
――監督とミュージシャンが共同でつくり上げていくという点でも映画音楽は独特ですね。だからこそ、面白いものが生まれる。
渡邊:僕は映画音楽の仕事と何にも付帯しない自分の音楽を分けて考えていません。映画音楽には時間などの制約もありますが、自分がベストと思えるぎりぎり手前の段階で音楽が手を離れたときの不条理な余白は、映画にあって手法や趣向を飛び越えた音に変化するような気もします。「ナミビアの砂漠」の即興をベースにした曲づくりも、「Cloud」の主題も半ば偶発的に着想しているので気がかりではありますが、それは常套(じょうとう)や習慣から逸脱した作業だからではないかと。個人的に作曲の仕事は漠然とした不安がある中で続けていることが多いです。