映画「シャイニング」のシェリー・デュバル逝去 糖尿病の5つの合併症を解説
「動脈硬化」 動脈硬化は動脈が硬くなる状態を指します。通常、血管は柔らかくしなやかな形状をしているものです。しかし、血液中にブドウ糖が多くなると血管を傷つけ、弾力性が失われてしまいます。 血管の弾力性が失われると、血液の流れが悪くなったり血管が詰まりやすくなったりしてしまいます。これにより引き起こされる恐れがあるのが、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気です。 特に心臓や脳などの重要な臓器の動脈が硬化することを細動脈硬化と呼び、細動脈硬化が起きると命に関わる病気を発症する可能性が高くなります。 動脈硬化は、糖尿病以外にも加齢・高血圧・喫煙・肥満・運動不足などさまざまな要因が重なることで発症率が高くなります。 「糖尿病足病変」 糖尿病足病変は、水虫やタコ、足の変形などさまざまな症状が足にあらわれる病気です。糖尿病によって足の血管が細くなり、足の神経に障害が出ることによってさまざまなトラブルが発生します。 たとえば、糖尿病による神経障害で足の感覚神経が鈍くなったことによって傷や感染症に気づきにくくなり、傷口の化膿や水虫の悪化が進んでしまうなどの症状が代表的です。 また、足に広がる末梢動脈が細くなり血液の流れが悪くなると、足潰瘍や足の組織が死んでしまう足壊疽が起こる危険性もあります。 糖尿病足病変を早期に発見するためには、定期的な足の観察が欠かせません。定期的に観察することで足の異変に気づけるだけでなく、もし気づかないうちに傷ができていても放置することなく適切な治療ができます。 足の感覚に違和感がないか、足の状態が変化していないかなどを定期的に観察し、異変があれば医師に相談しましょう。
糖尿病の合併症の症状
糖尿病の合併症によって引き起こされる症状はさまざまです。続いて、合併症の症状を解説します。 「手足のしびれ」 糖尿病の合併症を発症していると、手足のしびれが症状としてあらわれます。これは神経障害や糖尿病足病変、動脈硬化が起こっている場合にあらわれる症状です。 先述したとおり、動脈硬化が進むと血管の弾力性が失われ血管が細くなります。手足に広がっている末梢動脈の動脈硬化が進むと、手足の血流が悪くなり、さまざまな不調を引き起こすのです。 血流が悪くなることで手足の冷えを感じやすくなるほか、しびれを感じるようになります。これは、末梢動脈から手足の神経に十分な栄養が行き渡らなくなることによって起きるものです。 「手足の痛み」 手足の痛みも、糖尿病の合併症によってあらわれる症状の一つです。先述した手足のしびれと同じ原因によって起きる症状であり、手足のしびれが悪化すると痛みを感じるようになります。 末梢動脈が細くなることや神経障害が大きく関係しており、感じる痛みは「チクチクする」「ヒリヒリする」と表現されたり、うずくような痛みと表現されたりします。 症状が進むと歩いているうちに足が重くなり痛みを感じるようになり、さらに悪化するとじっとしても痛みを感じるようにもなるでしょう。 「視力が落ちる」 視力の低下も合併症によって引き起こされる症状の一つです。糖尿病網膜症を発症している場合に起きる症状であり、発症前に気づくことが難しい症状でもあります。 糖尿病網膜症を発症していると、網膜の血管がむくんだり壊れたりして白斑や出血が起きますが、初期段階では特に自覚症状はありません。網膜内に酸素や栄養が行き渡らない状態が続くと、足りない分を補おうと新しい血管がつくられます。 この新しい血管は壊れやすく、網膜の内側にある硝子体内で出血を引き起こすと、視力低下の原因となる網膜剥離につながってしまうのです。 また網膜内にある黄斑にむくみができることも、視力低下につながります。この黄斑のむくみを糖尿病黄斑浮腫といい、糖尿病網膜症のどの段階でも起きる可能性がある病気です。 「失明」 先述した視力低下の低下のほかに、糖尿病の合併症によって失明する可能性もあります。先述した硝子体内での出血により網膜剥離が起こると、視力の低下だけでなく失明にもつながる可能性があります。 糖尿病網膜症は自覚症状がほぼなく、硝子体出血や網膜剥離などの症状が起こった場合に気づくことの多い病気です。気づいた時には重症化している可能性もあるため、糖尿病網膜症を早期に発見するには、定期的な眼科検診が欠かせません。 「腎臓の働きが悪くなる」 糖尿病の合併症により、腎臓の働きが悪くなるといった症状もあらわれます。これは血糖値が高い状態が続くことによって腎臓の血管が細くなり引き越される症状です。 腎臓のなかには糸球体と呼ばれる毛細血管があり、この血管が血液を濾過して体に必要な栄養を取り込んだり、老廃物を排泄したりといった働きをしています。しかし糖尿病になり腎臓の血管が細くなると、この働きが鈍くなります。 糖尿病腎症によって腎臓の働きが悪くなっているかどうかを早期発見するには、微量アルブミン尿検査が有効です。 また、腎機能が低下していると糸球体で濾過される血液の流量が減少するため、血液検査によってどのくらいの量が濾過されているかを確認する方法もあります。 「水虫」 水虫も糖尿病の合併症によってあらわれる症状の一つです。水虫は皮膚の感染症の一種であり、真菌である白癬菌が原因となって発症します。 足の指の間がかゆくなる趾間型白癬や、水ぶくれができる小水疱型白癬のほか、爪が厚く変形し色が白く濁る爪白癬などの種類があります。糖尿病足病変の代表的な症状の一つであり、感染している場合は真菌薬や抗生物質などによる治療が一般的です。 また、糖尿病足病変の検査では感染症の検査を行うケースもあり、その際に真菌の検査を行う場合があります。水虫を放置すると傷口から雑菌が入り二次感染を引き起こす可能性もあるため、早めの治療が必要です。 「足の変形」 糖尿病の合併症によって、足の変形が起きるケースもあります。水虫と同じく糖尿病足病変の症状の一つであり、神経障害が関係している症状です。外反母趾・内反小趾のほか、シャルコー足などの変形が起き、靴擦れをしたりタコができたりしやすくなります。 神経障害によって痛みを感じにくくなるため、変形によって怪我や骨折をしていても気づきにくいため、定期的な足の観察が必要です。また変形した足には靴が合わなくなる可能性もありますが、神経障害のために靴が合っていないことに気づけない可能性があります。 靴が合っていないと靴自体にも負担がかかって変形したり靴擦れで出血した血が付着していたりするため、足の変形が疑われる場合には靴も確認してみましょう。 「自覚症状がないケースも」 糖尿病の合併症には自覚症状がないケースも少なくありません。糖尿病網膜症や糖尿病腎症など、初期段階では自覚症状がなく、進行してから発症に気づくケースもあります。そのため糖尿病になると、合併症の症状の有無にかかわらず合併症に関する検査が必要です。 糖尿病網膜症を発見するための眼底検査などの眼科検診、糖尿病腎症に気づくための尿検査・血液検査など、合併症発見に必要な検査を適切に行いましょう。 自覚症状がなく、検査で問題ないからといって合併症を発症していないとは限りません。合併症が重症化すると命に関わる可能性もあるため、医師の指示に従い、定期的な検査や予防を行いましょう。