「江副浩正」はやはり「起業の天才!」だった…日本メディアが見抜けなかった15兆円企業「リクルート」の“恐るべき”価値
モンスター企業への道
リクルートがIndeedを買収した2012年、日本では誰もその野望を見抜けなかった。買収が発表された2012年9月、新聞はこれをどう扱ったかを見ればそれが分かる。 「米の求人情報検索会社、リクルート、買収合意」 日本経済新聞は本紙ではなく、専門紙「日経産業新聞」の5ページ目に、350字足らずの短い記事を載せた。翌年、インドの人材紹介会社を買収した時には本紙に909字の記事を掲載しているから、こちらの方がはるかに重要と判断したのだろう。その他のメディアはおよそ「無視」である。 日本のメディアが気付かぬうちに、リクルートはモンスター企業への道を歩み始めた。道筋をつけたのは創業者の江副浩正である。江副は日本の「ものづくり」が全盛だった1980年代、いち早く「情報こそが最大の経済価値を生む」と見抜き、就職のみならず住宅、旅行、中古車などあらゆる分野で売り手と買い手をマッチングする情報誌ビジネスを展開した。世界最大の求人検索エンジン、Indeedもその延長線上にある。江副は間違いなく「起業の天才」だった。 米司法省は11月20日、米連邦地方裁判所に対し、グーグルにインターネット閲覧ソフトの「クローム事業」を売却させることを含む独占是正案を提出した。司法省が「事業分割」を求めるのは、2000年の米マクロソフト以来、ほぼ四半世紀ぶりだが、リクルートもまた、求人情報に関してかつてのマイクロソフトや現在のグーグルに匹敵した「独占企業」になるかもしれない。
大西康之(おおにし・やすゆき) 1965(昭和40)年生まれ。愛知県出身。1988年、早大法卒、日本経済新聞入社。1998年、欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員を経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫最後の闘い JAL再生に賭けた経営者人生』(日本経済新聞社)『「ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア佐々木正』『流山がすごい』(以上新潮社)『東芝解体 電機メーカーが消える日』(講談社)『「最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)がある。 デイリー新潮編集部
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