「江副浩正」はやはり「起業の天才!」だった…日本メディアが見抜けなかった15兆円企業「リクルート」の“恐るべき”価値
止まらない野望
だが出木場・リクルートの野望はここで止まらない。先の決算記者会見で出木場はこう続けた。 「人々の仕事探し、人類の仕事探しは今後5年から10年ぐらいでテクノロジー、特にこのAIの進化によって、全く今までと変わった、違った経験になっていくんじゃないかなという風に確信をしているわけです」 「もちろん世界中の全ての方々を幸せにできるんだということは中々言えませんが、少なくとも人々が情熱を持って働けると、こんな仕事を見つけることが少しでも簡単にできるようになれば、日々の生活の満足度も少しは高くなっていくのではないかなという風に思っています」 「そのためにもですね、我々グループ全体でデータ、またGen(生成)-AIも含めたテクノロジーをフルに活用しながらですね、今後も世界の人材マッチングの改善進化は私達にしかできないんだという程の強い責任感を持って事業を運営していきたいなという風に考えているという状況でございます」
世界株式会社の人事部
口調こそ丁寧だが、出木場は「世界の人材マッチングを一手に引き受ける会社になる」と言っているのであり、それが実現したらリクルートは、世界何十億人の人々がどんな仕事を探しているか、世界の企業がどんな人材を求めているかを見透かす「魔法の水晶」を手にいれることになる。 拙著『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(新潮文庫)の主人公であるリクルート創業者の江副浩正は、のちに「リクルートブック」と改名する就職情報誌「企業への招待」によって、就職先を探す大学生・高校生と新卒社員を探す企業を出合わせた。それまでコネしか手段のなかった学生は、自分が行きたい会社への門戸が開かれたし、企業もこれまで接点のなかった学生を採用できるようになった。「就職の民主化」である。 このサービスを通じてリクルートには「日本中にどんな大学生・高校生がいるか」という情報と、「どの企業が、どんな人材を欲しがっているか」という情報が集まった。江副はこれを称して「日本株式会社の人事部」と呼んだ。 江副から数えて6代目の社長になる出木場がやろうとしているのは、インターネットとAIを使って「日本株式会社の人事部」を「世界株式会社の人事部」にすることだ。 「世界株式会社の人事部」は、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」(グーグル)や、「人類を火星に移住させる」(スペースX)に勝るとも劣らぬ壮大な目標だ。