日本の防犯では子どもを守り切れない!? 世界の常識で「不審者」よりも避けるべきとされている“場所”とは
何かと物騒な昨今、我が子をひとりにさせることに不安を感じている方も多いでしょう。 登下校や学童・習い事への行き帰りなど、子どもだけになるタイミングで気をつけたいのが、事故のほかに“連れ去り”や“いたずら”です。 「あやしい人には気をつけなさい」「いかのおすし(※)」が合い言葉になっている子どもの防犯ですが、「それでは子どもを守れない」と警鐘を鳴らすのは、犯罪学の教授である小宮信夫先生。子どもを守るためには何に気をつければよいのか、お話を伺いました。 育児目標は「とにかく死なせない」数々の不審者を通報してきた母が子どもに選んだ“習い事”とは? ※「いかのおすし」とは警視庁考案による防犯標語で、子どもが知らない人に声をかけられたときに、被害にあわないようにするための5つの行動の頭文字をまとめたもの。 「行かない(知らない人について行かない)」「乗らない(知らない人の車に乗らない)」「大声を出す(助けて!と大きな声を出そう・防犯ブザーを鳴らそう)」「すぐにげる(大人のいる方にすぐにげる)」「知らせる(どんな人が何をしたのか家の人に知らせる)」の5つで「いかのおすし」。
「いかのおすし」は「車にぶつかったらこう受け身を取りなさい」と教えるようなもの
日本の防犯対策は、「子どもの目の前に犯罪者が登場」したところからスタートなんですね。で、どうするかというと、子どもに「防犯ブザーを鳴らしましょう」「全力疾走で逃げましょう」と、そういう話になってしまう。 これはクライシス・マネジメント=危機対応で、私からすると「もう手遅れ」という感じです。危機が起こった後の対応を考えているからです。 海外での防犯の考えも私と同じで、目の前に犯罪者が現れてしまったら「もう遅い」「犯罪はすでに始まっている」という発想です。 本来であれば「どうすれば犯罪者に声をかけられないか」を考えるべきで、犯罪者に会った後の対応を教えるのは「車にぶつかったらこう受け身を取りなさい」と教えるようなものです。
連れ去られた子どもの8割は、だまされて自分からついていく
「不審者に気をつけましょう」と言いますが、では不審者とはどんな人でしょう。見た目で判断できるでしょうか。いまどきの犯罪者は普通の人を装い、目立たないように振る舞います。 「知らない人についていかない」とも言われますが、公園で数回見かけたり、道端で少し話したりしたら「知っている人」になってしまうのが子どもです。 犯罪者は、児童心理のスペシャリストです。子どもの警戒心を解く方法をたくさん知っています。当たりさわりのない会話で事前に「知っている人」になっておき、後日、犯行に及ぶといったことがあります。 小学生以下の連れ去り事案では、子どもの8割はだまされて、自分からついていっています。この場合、知らない人にだまされている意識はないので、逃げることも叫ぶこともしません。