日本の防犯では子どもを守り切れない!? 世界の常識で「不審者」よりも避けるべきとされている“場所”とは
「入りやすくて見えにくい」とは? 実際に危険なのはこんな場所!
“「入りやすい場所」とは、誰もがそこに簡単に入ることができ、そこから簡単に出ていける場所です。犯罪者の立場から見れば、簡単にターゲットに近づくことができ、すぐに逃げることができる場所です。 (中略) 「見えにくい場所」とは、その場の様子をつかむことができにくい場所です。そうした場では犯人は悠々と犯罪の準備をすることができ、また犯行そのものを目撃される可能性も低くなります。 逆に「見えやすい場所」は、犯人が自分の姿を確認される可能性が高くなり、犯行を目撃されやすくなりますので、犯行場所に選ばれる可能性が低くなるのです。/子どもは「この場所」で襲われる (小学館新書)より” 具体的に見ていきましょう。 例えば歩道のある道路では、植え込みやガードレールがあれば「入りにくい場所」です。 小学生をだまして車に乗せるとして、ガードレールがあったらスムーズに乗せられませんから、そういうところにはわざわざ停めません。実際に2004年に起きた奈良女児誘拐殺害事件では、植え込みの途切れた場所で連れ去られています。また私の調べた限り、道路での子どもの連れ去りは100%ガードレールや植え込みのない場所で起きています。 ほかには、フェンスに囲まれた公園と木々に囲まれた公園では、前者が「入りにくくて見えやすい」、後者が「入りやすくて見えにくい」公園です。フェンスで囲われている公園は入り口が限られているので、犯人にとっては逃走がしにくく、子どもをこっそり連れて行きづらくなります。逆に、木々に囲まれているだけではどこからでも出入りができますし、木々が死角になって、公園内の様子が外から見えづらくなります。 犯罪から子どもを守るためには、こういった「危険な景色」を読み解く力をつけさせることが大切です。
【Profile】小宮信夫(こみや・のぶお)
立正大学文学部社会学科教授(社会学博士)。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者でもある。全国の自治体や教育委員会などに「危ない場所」を見分けて子どもを犯罪から遠ざける防犯アドバイスを行っている。『犯罪は予測できる』(新潮新書)、『写真でわかる世界の防犯--遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)など著書多数。