愛犬10年物語(2)番犬・同志・学園マスコット 世代超え劇団支えた犬たち
「演劇は皆で一緒に作るものです。お互いが心を通わせないと良いものができない。私たちには創立当初から動物と親しくする広い心があった。犬のおかげで、私たちの方が影響を受けて心が豊かになったということもあるでしょう」と込山さんは語る。時代の変化はあれど、犬たちの純粋さと、それを受け入れる心の豊かさは不変なのだ。最後に、真山美保が、初めて八王子の劇団内で生まれた子供である蘭里(らんり)少年(現新制作座理事長・真山蘭里氏)と、当時飼っていた「ラッシー」という柴犬を歌った『蘭里とラッシー』という詩を紹介しよう。 『蘭里とラッシー』 ラッシーよ、ラッシー 何処へゆく フラッグの尾をふりながら ラッシーよ、ラッシー ふりむいて 光の輪のなかで 僕をひっぱって連れていったね 二人の秘密の小屋ができたね ラッシーよ、ラッシー ふざけたね 僕と君、あの道 ラッシーよ、ラッシー 何処へゆく フラッグの尾をふりながら ラッシーよ、ラッシー ふりむいて 僕を待っててくれたね 僕の眼をみつめ、云ってくれたよね 心配なんです あなたのこと あんまりやさしく、傷つきやすく 苦しむだろうと わかってます ラッシーよ、ラッシー ほんとだよ ぼくは悩みつづけた ラッシーよ、ラッシー 君の眼で 僕は耐えてこられたんだ ラッシーよ、ラッシー さようなら 君は年齢をとって ラッシーよ、ラッシー 去ったんだね 僕に愛を残して もしも君が死ぬならば 僕はとても 生きられない ラッシーよ、ラッシー 知ってたんだね だから黙っていったんだね ラッシーよ、ラッシー ごめんよ 君ひとり行かせた僕を ラッシーよ、ラッシー これから 僕はおとなになる ラッシーよ、ラッシー つらいけど 君を胸に さようなら ラッシー (眞山美保詩集・第一集=劇団新制作座発行 より)
【茶々、絵里奈、千代丸】劇団新制作座が、代々血統を守りながら育ててきた柴犬集団の末裔。最年長・15歳半の茶々は、癌の手術を乗り越え、目と耳が不自由ながらも、敷地を共有する高校生たちをも癒やし続けている。壮年の千代丸はまだまだ元気。“山の上の子”の血を引く絵里奈は、唯我独尊の和犬らしさを貫く。共通の好物はベテラン女優の江崎はんなさん特製の「牛肉ごはん」。
------------------------------------------ ■内村コースケ(うちむら・こうすけ) 1970年生まれ。子供時代をビルマ(現ミャンマー)、カナダ、イギリスで過ごし、早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞(東京新聞)で記者とカメラマンをそれぞれ経験。フリーに転身後、愛犬と共に東京から八ヶ岳山麓に移住。「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、「犬」「田舎暮らし」「帰国子女」などをテーマに活動中