「とらやさんがあるから引っ越した」、料理研究家・髙山かづえさんが世田谷の牛肉店を愛する理由。
4.脂の分量や合いびきなど、 美味しいひき⾁を考える。
ある時、とらやのひき肉と他店のひき肉でシュウマイを作ったら、他店のほうからは脂汁が出て、ひとまわり小さくなってしまった。 「両方作って、良いひき肉とは何かを考えました」(髙山さん) ひき肉は劣化が早い。安売りされているひき肉には冷凍物が多く、ドリップが出やすい。とらやの場合は鮮度のいい赤身部分を中心にひき立てで出すから、こねるほどに粘り気も出るし、旨味が強い。 「そしてこちらでは、シュウマイや餃子、メンチカツなどひき肉を使ったお惣菜も扱っていて、それがとても美味しくて評判です」 惣菜は妻のまり子さんの担当で、髙山さんはその餃子のレシピを今回特別に見せてもらった。 「ひき肉は、なんと牛と豚の合いびきでした。あの味が再現できるかどうか、さっそく試してみます」
5.ローストビーフは肉のかたまりを薄切りにした⽜脂で包む。
ローストビーフにはイチボ肉が合う。それも佐藤さんが教えてくれた。イチボ肉とは牛のももから腰にかけて取れる上質の赤身、ランプ肉の一部で、ランプよりも細かい脂のサシが入っている。 「そして、焼く時に使う牛脂も一緒にくれたんですが……」
その牛脂がステーキなどに使うサイコロ状のものではなく、薄く平たく削いだタイプのものだった。 「ヒレ部分を覆っている牛脂で、ステーキに使うのと違ってこの部分は溶けづらく、むしろ熱に強いんです」(佐藤さん) これでくるんでオーブンに入れれば、熱のあたりが柔らかく、しっとりと焼き上がる。さらに下に敷いた野菜は肉汁を吸って、上級なグレービーソースの素にもなる。 「私の作るローストビーフの味が格段に上がりました」
撮影・青木和義 構成&文・堀越和幸
『クロワッサン』1117号より
クロワッサン オンライン