「儲からない、撤退したい」な食堂車に“復活”の兆し なぜ廃れ、なぜいま再注目されるのか
趣を変えて現在に至る
そのような食堂車の方向性を変えたのは、1988(昭和63)年に運行開始した寝台特急「北斗星」でした。予約制コース料理による豪華路線が大好評を博したのです。「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」の高級食堂車は、展望食堂車の「夢空間」や、2階建て食堂車の「カシオペア」などに発展していきます。 その一方で、自由にメニューが頼めた従来の食堂車は、寝台特急が1993(平成5)までに、新幹線が2000(平成12)年までに全廃されました。1992(平成4)年に登場したJR九州の787系電車には、豊かな旅の目玉としてビュッフェが設けられましたが、2002(平成14)年の九州新幹線部分開業で全廃されています。 再度、全滅しそうな食堂車の転機となったのは、2011(平成23)年の近畿日本鉄道「しまかぜ」でした。電子レンジとはいえ、車内で調理した料理を提供する「カフェ」車両が連結されたのです。単体では赤字でも「豪華列車で集客し、沿線のグループ企業のホテル利用も含めるなら問題ない」と判断されたのでした。 豪華列車の目玉として、食堂車を連結する流れはその後も続き、2020年には787系を改造した豪華観光列車「36ぷらす3」でビュッフェが復活。JR東日本のE261系電車「サフィール踊り子」は車内調理も行う「カフェテリア」を連結しています。 そして本格的食堂車は、クルーズトレインで現在も見られます。2013(平成25)年の「ななつ星 in 九州」や、2017(平成29)年の「トランスイート四季島」「トワイライトエクスプレス瑞風」では、一流レストラン以上の料理が提供されています。
安藤昌季(乗りものライター)