蒸し厚い時期にさらりと着たい 英ジョン スメドレーの「世界最高峰」ニット
■1784年創業 世界遺産の工場で今も製造を続ける
無駄をそぎ落とした普遍的なデザインには固有の品格があり、時代や流行を問わず、あらゆるスタイルに溶け込んでいく――。そんなジョン スメドレーのファインゲージニット(ハイゲージニット)は、ベーシック好きからモード派のファッショニスタまで、世界中の老若男女に幅広く支持されている。 人気の理由を探るべく、240年にもわたるブランドの歴史を紐(ひも)解いてみよう。 創業は1784年。ジョン・スメドレーと共同経営者であるピーター・ナイチンゲールが、英国ダービーシャー州マットロックのリーミルズ村に、綿花の紡績と生地製造の工場を立ち上げたのが始まりだ。 近くを流れる小川から動力と一定の流水を得られるこの地域は、工場にとって理想的な場所。240年たった今もなお、この地でニットウエアの製造を続けている。この拠点は、工場システム誕生の地として知られる「ダーウェント峡谷の工場群」の1つとして世界遺産に登録されている。
■一貫生産体制 最新機器できめ細やかな編み目を実現
18世紀後半には、毛織物や靴下の製造にも着手した。 その後、創業者の1人の息子であるジョン・スメドレー2世が事業を引き継ぐと、工場の近代化と拡大を推進。最高品質の原料だけを調達し、仕上げまでの全工程を一貫して自社で手掛けるニットメーカーへと発展させた。 さらに19世紀後半には、4代目のジョン・B・マースデン・スメドレーが最先端の紡績機と編み機をいち早く導入。ファインゲージニットの製造をスタートさせた。 他にはないきめ細やかな編み目のニットは、当時の英国で唯一無二の美しさを誇り、「ファインゲージニットのパイオニア」として一躍話題に。 1932年には3つボタンのポロシャツを発表。ドレスアップにもカジュアルダウンにも対応できる万能アイテムは、ブランドのアイコンとして今日までロングセラーを誇っている。
■2つのワラントを保有 亡き女王は工場を2回視察
早くから工場の近代化に取り組んだのに加え、積極的に最先端の紡績機と編み機を導入するなど不断の努力で技術力を磨いてきたジョン スメドレー。 その先駆的な工場を英国のロイヤルファミリーも訪れている。 1936年に君主となったジョージ6世は、国王就任前の1933年に工場視察に訪れたとの記録が残っている。英国王室との関係性は深い。彼の娘にあたるエリザベス2世も、1968年と2014年の2回、女王として工場を視察した。 女王は2013年、ジョン スメドレーにロイヤルワラントを授与。このワラントが5年ごとの再審査を経ながら更新されていっただけでなく、2021年には当時皇太子だったチャールズ国王からもロイヤルワラントを授与された。 こうした経緯から2024年6月現在、ジョン スメドレーは2つのワラントを保有している(注:エリザベス女王は2022年に逝去されたが、事業者側に重大な変更がない限り、事業者側はワラントを授与した王室メンバーが亡くなった時期から最長2年間使用することができる)。