動作分析による知識を広げ、深める びわこ成蹊スポーツ大・吉川文人准教授 スポーツが未来を変える
新年を迎えるたびに、心機一転して抱負や目標を立て、規律ある生活を始めようと思った経験は、多くの方に共通するものではないでしょうか。私もこれまで、「身体と心を引き締め、充実した日常を送ろう」と幾度となく意気込んでは、運動に取り組むものの、結局、長続きせず挫折してしまうことを繰り返してきました。その結果、理想とは程遠い身体と心の状態をなかなか改善できずにいます。 そんな自身の経験を加味しつつ、私はカメラとパソコンを用いて簡単に動作を分析できるアプリケーションの開発に取り組んでいます。このアプリは、私が提案した独自の動作特徴抽出法を基に、動画内の物体の移動方向、加速度、速度を簡便に推定できる仕組みを備えています。 特に、力の作用・反作用による身体の動きが、加速度や速度の変化として反映されるため、これらの特徴点を抽出することで、動作の分析・評価だけでなく、データ処理の効率化や自動化にも貢献できる可能性があります。このような効率化は、スポーツ、トレーニング、日常生活の中で繰り返される動作を分析する際に特に有効です。また、ビッグデータ応用を視野に入れた場合には重要な意味を持ちます。 これまで、野球の投球やサッカーのキック、ウエートリフティング、その場足踏みなど、多様な動作を分析し、技術の適用可能性を検証してきました。2024年度には、大学地域連携課題解決支援事業の助成を受け、「動作の客観評価がつなぐスポーツライフの探索・啓発活動」をテーマに、運動機能の質的向上に取り組む方々を支援する活動を進めています。 この活動では、自治体が抱える課題である「スポーツを活用した元気な町づくり」や「データサイエンス人材の養成・確保」に対応するため、学生主体の取り組み機会を創出しています。 本活動のテーマには、動作を行う側とフィードバックを行う側の双方が動作分析を通じて知識を深め、それを他者と共有することで、より多くの人々が動作の仕組みに興味を持ち、主体的に運動機能の改善やスキル向上を目指すというスポーツライフへの願いが込められています。私自身、運動機能の低下にあらがうためにも、自分を分析対象として運動機会を増やしつつ、動作分析を楽しんでいきたいと考えています。 ◇吉川文人(よしかわ・ふみと) 東京都立川市出身。修士(体育学)、博士(工学)=いずれも筑波大学。国立スポーツ科学センター、(独)産業技術総合研究所等の任期付き研究員を経て、現在はびわこ成蹊スポーツ大学スポーツパフォーマンス分析コース准教授。