息子は馬乗りになられ刃物を何度も振り下ろされた…殺人事件で最愛の息子を失った父親 変わり果てた姿に「ごめんな」 犯人は捕まっても「奪われた命はかえってこない」犯罪被害者の苦しい思い
10年越しの捜査「真っ暗なトンネルの中をさまよっているよう」「眠れない…泣けない」
最愛の息子を亡くした悲しみに加え、遺族にとって辛かったのが捜査が難航したことでした。犯人逮捕に至るまでにかかった期間は、約10年10か月。未解決事件の被害者であった当時の思いを次のように話します。 (堤敏さん)「遺族の苦しみというのは、真っ暗なトンネルの中でさまよっているようなものです。なぜ息子が殺されなければならなかったのか。その原因がわからない、理由もわからない。悲しみや苦しみをぶつけるところがない。本当に苦しいものでした」 (堤敏さん)「しばらくの間はもう感情も抜け落ちて、抜け殻のようになっていました。感情が麻痺してしまって、もう考えることができない。眠れない、食べられない、怒れない。泣けない。もちろん笑うことなんてできない。ひょっとしたら生きる気力すらなくしていました。体が動かない。トイレに行きたいっていうような欲求までなくなってしまう。もうじっと座り込んで、気づけば朝、気づけば夜っていうような日々を過ごしました」
「ヤクザ」「不良」心ない言葉がウェブ掲示板に…遺族への誹謗中傷も
当たり前の日常や大切な存在を、突然奪われる。しかし、犯罪被害者や遺族にとって、そうした悲しみだけではなく、世間からの誹謗中傷などにより、心を傷つけられる二次被害を受けたと話します。 (堤敏さん)「(インターネットの掲示板などに、将太さんのことについて)ヤクザ、暴走族、ヤンキー、不良、チンピラと、そういう言葉があふれました。ときには私達にもその誹謗中傷が向けられることもありました。深夜に遊びに出す親ってどうなのよと。しつけがなってないとか、馬鹿親だとか」
「被害者に解決はない。奪われた命はかえってはこない」
さらに敏さんは、犯罪被害者となり加害者に判決が下ったとしても、被害者が被害者でなくなることはないなどと話しました。 (堤敏さん)「犯人が捕まったからといって、息子が帰ってくるわけではありません。また、私達が受けた被害、心の傷は癒えることも消えることもありません。判決が下って刑が執行されて、社会的に解決したとしても被害者にとって解決はないんです。『自分の命より大切な子供の命を奪われる』、これは親にとっては耐えられないことなんですね。何年経とうが遠い昔の話で済むことではないんです。私の息子は殺されるために生まれてきたんじゃないんです。被害者になりたくてなったんじゃないんです」